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ことばセラピー[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.26

上月正博 (東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻機能医科学講座内部障害学分野教授・同病院リハビリテーション部長)

登録日: 2020-01-02

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自分の思いのままに人生を送りたくても、なかなか希望通りにはいかないことが多い。そのときに、心を奮い立たせ、明るくしてくれたのが先人の名言だ。名言の数々は、傷ついた心を、時空を超えて、一瞬にして癒し、元気づけてくれる。

私は実は名言マニアである。中学・高校時代は馬車馬のように励ましてくれる名言に印をつけた。年を取るに従って、慰めたり、心を温めてくれる名言に印をつけることが多くなった。ちょっとした名言が、心の安定につながり、勉強や仕事の後押しになる。そのような経験が積み重なって人生が大きく変わることまである。

講演や研究指導を行うようになり、その際に私の好きな名言を少し紹介したところ、後日、「あの言葉のおかげでやる気になった」などの声を頂くようになった。3年前のお盆に実家に一族が集まったときに初めて、精神科医の兄も名言マニアであること、気に入った名言をメモして患者に渡していることを知った。それなら兄弟で専門性の違いからの解釈の違いを楽しめる名言本をつくろう、と盛り上がり、さくら舎から『ことばセラピー』のタイトルをつけて兄が2冊、私が1冊出版した。

生活習慣病ではもちろん、心不全、慢性腎臓病、肝臓病という、かつて安静が治療とされてきた疾患でも運動療法の有効性が認められ、これらの疾患では今や運動療法が治療のひとつになっている。しかし、運動療法を指導しても、継続するためには、患者の強い意志が必要である。患者のアドヒアランスを上げる方法として、私はAIDE-SP2を提唱しているが、特に強調したいのはP2(Passion & Praise:熱意と賞賛)である。すなわち、医療関係者の熱意と患者が達成・継続できた場合にきちんと賞賛することが重要である。経験豊富な読者諸兄にはあたりまえのことであるが、どのような言葉で患者を励ましたり褒めたらよいかわからない、という若い医師は多く、その際には拙書を勧めることにしている。

医療に「名言」などを駆使したP2を取り入れ、患者・家族の笑顔をみながら、私自身も笑顔にしてもらえる幸せな毎日を送っている。

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