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ウィメンズ・ヘルス・ケアに医師が関わるということ[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.21

中山明子 (大津ファミリークリニック院長 )

登録日: 2020-01-02

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私は総合診療医として10年ほどウィメンズ・ヘルス・ケアの重要性を伝える仕事をしている。私がウィメンズ・ヘルスに興味を持ったのは、初期研修医の頃、女性である自分が月経についての相談に乗ることができないと気づいたのがきっかけだ。女性として月経は毎月あるけれど、何が正常な月経なのか、いつ医療機関の受診を勧めたほうがいいのか、医師としてわからないのは困ると思い立って勉強することにした。

月経については産婦人科医に任せとけばいいのではないか、と思われるかもしれない。女性にとって産婦人科の敷居を跨ぐのは結構勇気のいることである。月経に関するトラブルで、米国では1人年間少なくとも50万円の損失という研究報告があり、この数字をもとにすると、日本の経済損失は年間1兆円程度と試算される、という報告もある。プライマリ・ケア医は、月経不順や月経痛などのトラブルに早めに相談できる医師であってほしいと考え、ウィメンズ・ヘルス・ケアの研修を提供している。

月経について伝える研修で定評があるのが、生理用ナプキンの水吸収実験である。男性は大抵ナプキンに触ったことがなく、使用の仕方も知らない方が大多数である。女性は、男性がいかに月経のことを知らないのかを再発見する機会にもなるし、実は女性同士でも月経やナプキンの使用方法について話したことがない人が多い。ベテラン女医さんでも「若い時の私に学んだことを早く教えてあげたかった」という方もいる。おそらく、女性の中で「月経がくるのが楽しみ」という人はあまりいないと思う。

多かれ少なかれ、面倒でナーバスな時期である。男性であれ、女性であれ、少しでも月経について話し合う機会を提供し、うまく月経と付き合えるように、日常診療に生かして頂ければ、と思っている。

ウィメンズ・ヘルスなんて「自分が関わるのは難しい」と思う方もいるかもしれない。日常診療で一番簡単に月経について関われる秘訣を伝えたい。たとえば、10~40歳代くらいの女性の風邪などを診察する時に、最終月経を聞き、妊娠の有無を確認するだろう。どんな処方の際にも最終月経と妊娠の有無が大事なのは言うまでもない。その時に一言「生理痛はひどくない?」と聞くことだ。ひどいと言ったら、解熱鎮痛薬としてNSAIDsを処方する時に、余ったら月経痛の時に使ってみて、ということである。月経困難症の第一選択薬はNSAIDsであり、それを勧めるだけでウィメンズ・ヘルス・ケアの一歩を踏み出せるだろう。


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