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哀愁のリスボン[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(278)]

No.4986 (2019年11月16日発行) P.66

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2019-11-13

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バルセロナでのシンポジウムの帰り、リスボンに立ち寄った。彼の地を訪れたことのある人は皆、素晴らしい街だという。忙しくてあまり予習できずに行ったのだが、噂以上に素晴らしい街だった。

てっきり海沿いだと思っていたのだが、実際に面しているのはテージョ川の河口である。7つの丘の街と言われるだけあって、坂の多い街だ。両者があいまって、なんとも言えない絶妙の景色になっている。

そこを市電が走っているのがまたいい。縦横無尽と言いたいところだが、縦横だけでなく斜めにも。平らなところを走るだけでなく、坂道を上り下りする。それも、路線によっては軒先をかすめるように。短いものだがケーブルカーがあるのもいい。写真を撮り出すとキリがない。

景色だけでなく、食べ物も抜群だった。かなり無理をして行った2つ星レストランはもちろんのこと、カフェで食べたイワシの塩焼きやバルで食べた揚げ物まで、ことごとく美味しかった。

食べ物で面白かったのは、バカリャウとスイーツ。バカリャウというのは、タラの塩漬けを干したものだ。そんなもん美味しいのかと思われるかもしれないが、食べてみるとかなりいける。なんでも1000種類ものバカリャウ料理法があるそうだ。

スイーツの中で圧倒的な人気なのはエッグタルトだ。いたるところに売っている。確かに美味しいが、現地に太った人が多いのは、きっとこれのせいにちがいない。

天正遣欧少年施設の4人がヨーロッパに上陸したのはリスボンである。この街はその目にどう映ったのだろう。彼らが滞在したという教会の荘厳な内陣にたたずんで、そんなことをぼんやりと考えていた。

リスボン近郊にあるユーラシア大陸最西端のロカ岬には、燈台だけで他になにもない。しかし、大航海時代に想いをはせると、そこから見渡す大西洋は信じられないほど広かった。どの海も同じはずなのに。

気候のせいか、人々はなんとなくのんびりしているし、陽気で親切。歩いているだけでウキウキしてくる街だ。なのに、リスボンやポルトガルといえば「哀愁の」が枕詞みたいになっている。はて、いったいどうしてなのだろう。「運命」を意味するポルトガルの民族音楽、ファドはとても哀愁に満ちていたけれど。

なかののつぶやき
「リスボンの下町、こんなところをケーブルカーが走っています。下りは、歩いてもほとんど同じ速さでした。定員も少ないし,どれくらい意味があるんでしょうね」

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