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【書評】『がんの臨床検査ハンドブック』腫瘍マーカーの深い知識を身に付けるために

No.4984 (2019年11月02日発行) P.62

高木 康 (昭和大学副学長/特任教授)

登録日: 2019-10-30

最終更新日: 2019-10-29

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わが国の死亡数は昭和50年代後半から増加傾向となり、平成15年に100万人を超え、平成29年は134万4000人である。そして、死亡原因の第1位は悪性新生物(がん)の37万3178人(全死亡者数の27.8%)で、第2位の心疾患(高血圧を除く)の20万4203人(同15.2%)と比較すると約1.8倍であり、国民の悪性腫瘍への関心は高まっている。特に、治療法の開発・進歩は日進月歩であり、早期発見・早期治療することで、完治も期待できる。このため、人間ドックや検診による早期発見が国民の最大関心事になっている。

悪性腫瘍のスクリーニング検査として内視鏡検査やCT・MRIなどの画像検査は侵襲性が低いものの専門性が高く、アナログ情報であるので国民がその結果を自身で解釈するのは容易ではなく、医師あるいは専門家による解釈の説明を受け入れている。一方、尿や血液を用いたバイオマーカー、いわゆる「腫瘍マーカー」はデジタル情報であるので、国民が自分で解釈することが可能であるため、国民はHPや解説本を熟読して勉強に努めている。

本書は「腫瘍マーカー」に特化した「がんの臨床検査」の専門書であり、2つの大きな特徴がある。まず、「腫瘍マーカー」は臨床検査に関する専門書の一部として解説されているが、解釈におけるピットフォールについては十分な記載がされていない。「腫瘍マーカー」は尿や血液の体液中ではきわめて微量であるため、免疫学的技法で測定されている。この免疫学的測定法では測定項目に対する特異抗体を使用していることから、検出するエピトープにより測定値が異なるなどの解釈上の問題点も多い。本書では類書では触れられていない試薬間差や偽陽性など検査技術的に未解決な問題点を「測定・精度・基準値(カットオフ値)」「生理的変動ならびに良性疾患での成績」で解説しており、「腫瘍マーカー」成績の解釈上のピットフォールと、過大な期待で使用されることがないように使い方も解説している。

もう1つの特徴は最近、注目されている「がんと遺伝子」を要領よく簡潔に解説していることである。遺伝子関連検査、コンパニオン診断、がん遺伝子パネル検査などについて説明し、「これからのがん検査」では、腫瘍DNA、マイクロRNAなど最先端の「腫瘍マーカー」の知識を解説している。

現在は国民が自ら考え、選択する時代である。医療においても国民が高いレベルの知識を有しており、彼らと適切に対応するには医療関係者はさらに奥深い知識が必要である。本書は、医師、医学生、臨床検査技師ばかりでなく、看護師、放射線技師、理学療法士、作業療法士などの医療スタッフにもご一読をお勧めする。座右の本として、日常診療に役立ててほしい。

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