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妊娠したら運転しないほうがいい?[先生、ご存知ですか(22)]

No.4979 (2019年09月28日発行) P.63

一杉正仁 (滋賀医科大学社会医学講座教授)

登録日: 2019-09-27

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妊娠したら運転をやめたほうがよいのですか、と聞かれることがあります。多くの地区では、移動手段として自動車の運転は欠かせません。

かつて、千葉県の郊外で病院に通院する妊婦さんを対象に調査をしたところ、日常的に自動車を運転していた女性の94.9%は妊娠後も運転を続けており、うち67.0%は、週に5日以上運転を行っていました。妊婦であっても多くは以前の生活と同様に運転を続けているのです。また、自動車の運転が体に悪いということはありません。したがって、妊娠しても運転を続けることは決して悪くはありません。

妊婦と交通事故

わが国で、どれくらいの妊婦が交通事故に遭遇したかを示す公的な統計はありませんが、札幌で近年行われた調査によると、2.9%の妊婦が自動車乗車中に交通事故に遭遇していたそうです。また、妊婦を対象にした一般雑誌が行った独自調査によると、妊娠中に自動車事故に遭遇した人の割合は3%で、先の調査とほぼ同じでした。

交通事故は自動車乗車中のみならず、自転車や自動二輪車乗車中の事故、歩行中に車両と接触する事故なども含まれます。したがって、妊娠中にいわゆる交通事故に遭遇する割合は少なくとも3%以上と考えられます

妊娠すると注意散漫に

自動車の運転には、複雑な認知、判断、操作能力が必要とされます。もちろん、妊娠後も自動車を運転する際には同様の能力が求められます。

カナダで、2006~2011年に出産した18歳以上の女性約51万人を対象にした大規模な研究が行われました。この研究では、妊娠前3年間、妊娠中、産後1年間のそれぞれにおける自動車運転中の事故率が計算されました。妊娠前3年間における事故率は1000人当たり4.55でした。しかし、妊娠5~7カ月では6.47となり、妊娠前に比べてこの時期に事故を起こす危険性は42%も上昇していました。中でも、妊娠5カ月頃に事故率が7.66と最も高かったのです。その後、出産直前には事故率は2.74まで低下し、産後の1年間も2.35と、妊娠前よりも明らかに低かったのです。

ちなみに、歩行中の事故、転落事故、自殺などについても妊娠前と妊娠後の発生率が比較されましたが、大きな変化はありませんでした。なぜ妊娠5カ月頃に自動車事故を起こしやすくなるのか、未だ詳しくは解明されていません。しかし、妊娠することによる嘔気、全身のだるさ、睡眠障害、注意力の低下が関与しているのではないかと考えられています。したがって、妊婦に対しては、自動車運転に対する注意を啓発することが重要です。

シートベルトを必ず着用して

一部の方は、妊婦はシートベルトの着用を免除されていると誤解されていますが、道路交通法では、妊婦であってもシートベルトの着用が義務づけられています

妊娠すると、腹部が突出しますから、非妊娠時に比べて腹部がハンドルに接触しやすくなります。したがって、シートベルトを着用しないと、衝突時に腹部を強打することになり、児に悪影響が出ます。自動車運転時のみならず、乗車時に正しくシートベルトを着用することも指導してください。

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