株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

■NEWS 【欧州心臓病学会】心房細動併発安定CAD例にはDOAC単剤?抗血小板薬併用?日本発RCT "AFIRE"が答える

登録日: 2019-09-04

最終更新日: 2019-09-04

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

心房細動を併発した、安定冠動脈疾患(CAD)例に対する至適抗血栓療法は、必ずしも明らかではない。抗凝固薬単剤、あるいは、抗血小板薬併用のいずれが良いのか、確固たるエビデンスが報告されていないためだ。この疑問に、わが国の臨床研究が答えを出した。2000例以上を登録した ランダム化試験 "AFIRE" である。8月31日からパリで開催中の欧州心臓病学会において、安田 聡氏(国立循環器病研究センター)が、9月2日のHOTLINEセッションにて報告した。

■非盲検のランダム化試験

AFIRE試験の対象は、日本において安定CADと非弁膜症性心房細動と診断され、「CHADS2スコア≧1」だった2,236例である。直近1年以内に冠血行再建術の既往がある例、現在PCIの適応がある例は除外されている。またステント血栓症既往例も除外された。平均年齢は74歳、71%にPCI既往があり、CABG既往例は11%、残りは冠血行再建術の既往なく、50%以上の狭窄(PCI適応なし)を認めるのみの患者だった。

これら2,236例が、DOAC単剤群とDOAC・抗血小板薬併用群にランダム化され追跡された。盲検化は行われていない。DOACはリバーロキサバン15mg/日(クレアチニン・クリアランス:15-49mL/分例では10mg/日)を用い、抗血小板薬は担当医の判断に任せた。その結果、70%がアスピリン、27%がP2Y12阻害薬を併用していた。

■「総死亡」に著明な差が生じ早期中止

追跡予定期間の終了を待つことなく、併用群における「総死亡」リスク増加が明らかになったため、試験は早期中止となった。観察期間中央値は24.1カ月、有効性1次評価項目「脳卒中・塞栓症・心筋梗塞・血行再建を要する不安定狭心症・総死亡」の発生数は210例だった*。

その結果、有効性1次評価項目の発生率は、DOAC単剤群:4.14%/年、抗血小板薬併用群:5.75%/年で(ハザード比 [HR]:0.72、95%信頼区間 [CI]:0.55-0.95)、DOAC単剤群における非劣性が確認された(P<0.001)。

なお、試験当初の有効性1次評価項目では、「総死亡」ではなく「心血管系(CV)死亡」が採用されていた(2015年8月に変更。ただしDOAC単剤群では、「CV死亡」、「非CV死亡」ともリスクは有意に減少)。

*早期中止試験のイベント総数が200以下だった場合、有効性が実際よりも大きく出る傾向がある [植田真一郎. 論文を正しく読むのはけっこう難しい. 医学書院. 2018]

■脳出血が著明減少

これら1次評価項目の内訳を見ると、DOAC単剤群と抗血小板薬併用群間で、脳梗塞には有意差がなく(HR:0.73、95%CI:0.42–1.29)、脳出血に著明減少(同:0.30、0.10–0.92)を認めた。

一方、虚血性心疾患は、DOAC単剤群で心筋梗塞HRが1.60(95%CI:0.67-3.87)と増加傾向を認めたが、「血行再建を要する不安定狭心症」HRは逆に0.71(同:0.35–1.44)と減少傾向だった。

また安全性1次評価項目である「ISTH大出血」は、DOAC単剤群で有意に減少していた(1.62%/年 vs. 2.76%/年、HR:0.59、95%CI:0.39-0.89)。

このようにDOAC単剤は抗血小板薬併用に比べ、有効性において非劣性かつ、安全性では上回るという結果となった。
 
本試験は、報告と同時にNEJM誌にオンライン掲載された。NEJM論文によれば、実施資金を提供したのは「循環器病研究振興財団」である。一方、試験デザイン論文には、「本試験は循環器病研究振興財団が立案したプロジェクトであり、バイエル薬品株式会社の経済的支援を受けた」と記されていた。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top