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子どもが喜ぶガチャガチャは小児科の待合室対策に効果的なアイテムです[クリニックアップグレード計画 〈待合室編〉(6)]

No.4969 (2019年07月20日発行) P.14

登録日: 2019-07-19

最終更新日: 2019-07-20

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日医総研が3年ごとに実施する「日本の医療に関する意識調査」によると、患者が「受けた医療」に対し最も不満を感じているのは「待ち時間」。予約システムを活用した受診時間帯の平準化など、各医療機関はさまざまな工夫をしているが、それでも一定の待ち時間が生じることは避けられない。シリーズ第6回は、デジタルとアナログの両面から待ち時間対策を講じ、スムーズな医療提供を目指すクリニックの事例を紹介する。

日医総研の2017年調査結果(図)を見ると、3割以上の患者が「待ち時間」に不満を持っていることが分かる。特に、忙しいビジネスマンや親子連れなど、待ち時間が負担になる患者が多いクリニックでは、待合室での時間を少しでも快適に過ごしてもらうような工夫がクリニック運営の重要な課題となる。

“Smooth&Smart”を重視

東京・千代田区麹町にあるグローバルヘルスケアクリニックは2019年6月、内科・小児科・トラベルクリニックなどを標榜するクリニックとして開院した。

院長の水野泰孝さんは、20年以上にわたり大学病院やナショナルセンターを中心に、小児科と感染症内科、特に熱帯感染症の臨床・研究、海外渡航者の健康管理など“グローバルヘルス”に関わってきた経歴の持ち主。培ってきた専門性の高い医療を提供できるかかりつけ医療機関を目指し、顧問医として7年間勤務したJICA(国際協力機構)や多くの大使館、外資系企業がある麹町を開業の地に選んだ。

水野さんは「Patient first」の理念に基づき、①Safety、②Speciality、③Satisfy、④Smooth&Smart─という「4つのS」を診療指針に掲げる。そのため同院では、患者の満足度や利便性を高めるさまざまなシステムやサービスを積極的に導入している。

周辺に勤務するビジネスマンが業務の合間に受診することを想定し、いつでも受診できるようWeb予約システムと、問診表の記入時間を短縮するWeb問診システムを導入。診療から支払いまでの流れをスムーズにするため、AI搭載の電子カルテを活用し、支払いについても、クレジットカード決済以外に交通系電子マネーでの決済が可能でキャッシュレスに対応している。

ガチャガチャレンタルサービスを導入

同院のある麹町は徒歩10分程度の圏内に公立小学校が3校あり、都心でありながら子育て世代のファミリーが一定数暮らしている地域。小児科の指導医資格を持つ水野さんは小児科診療にも力を入れていく方針で、最新のデジタルシステムに加え、子ども向けにアナログな待ち時間対策も講じている。

水野さんが導入しているのは、ビーエムジャパンが提供する医療機関向けガチャガチャレンタルサービス「がちゃポン先生」(http://www.gachapon-sensei.com/)。きっかけは開業に当たり元同僚や知人の小児科クリニックを見学したときに、待合室にガチャガチャが設置されているケースが多く、「小児科の必須アイテム」と薦められたことだった。インターネットでガチャガチャのレンタルサービスを検索し、がちゃポン先生のシステムが「一番マッチした」という。

がちゃポン先生(写真①)のレンタルシステムは、ガチャガチャ本体は無料レンタル、専用のカプセル玩具(写真②)を医療機関が購入するというもの。カプセル玩具の価格は100カプセルで6,000円(送料込み・税別)で、無くなり次第、その都度発注する。

安全性に配慮し、カプセルには食品衛生法上で定められた厳しい検査を通過した玩具のみを封入している。本体のレンタル期間中、不具合があった場合は代替機と交換できる。「30セットのカプセル玩具+コイン」の無料お試しセットを利用することも可能だ。

使用するのは硬貨ではなく専用のコイン。待ち時間に遊ぶだけでなく、医師が診察を受けた子どもへのご褒美としての用途も想定し、「頑張ったね!」という文字と笑顔のモチーフが刻印されているなど小児科に特化した工夫が凝らされている。

「お子さんたちが『ガチャガチャがある先生のところなら行ってもいい』という印象を少しでも持ってくれればと思います」(水野さん)

著作権許諾済のコミックレンタルも活用

同院ではビーエムジャパンのコミックレンタルサービス(写真③)も活用している。100冊単位で利用するシステムで、3カ月ごとの一部タイトルの入替、続刊・欠刊・劣化本の補充交換費用、万一の紛失・破損時の補償が含まれている。料金体系は、100冊プランが送料込みで月額5,000円、200冊プランが7,000円、300冊プランが9,000円となっている。本棚がなければ冊数分の本棚の無料レンタルもできる。

多くの医療機関や店舗で、購入したコミックを閲覧できるように設置しているが、厳密に言えば著作権法の「貸与権の侵害」に該当するとの見方があり、法的にはグレーゾーンだ。ビーエムジャパンでは全所有在庫の著作権使用許諾を取得。届けられるコミックには著作権使用許諾シールが貼付されており、コンプライアンスの遵守が求められる医療機関にとっては安心して利用できる体制が整っている。

同社はこのほか、雑誌の発売日に最新刊が自動的に届く雑誌ダイレクトデリバリーサービスも展開する。取り扱いは約2000誌。買い出しが不要になり、一冊から注文可能で使い勝手のいいサービスだ。

患者目線で自院の機能を充実させていく

開院してから約1カ月、安定的な集患はこれからという段階だが水野さんは「現場の臨床医として患者さんの近くで診療することがとても楽しい」と語る。大学病院で順調にキャリアを積み管理職となっていた水野さんが開業を意識したのは、診療の機会が減ったことがきっかけだった。医師としてのモチベーションを上げるためにパートとしてほかの病院や診療所で外来診療を行い、現場の臨床医として診療することが自分が本当にやりたかったことだと気づいたという。

「地域のクリニックでは患者さんの悩みにじっくり向き合うことが大切になります。これこそが医療の原点であると医師人生25年目にして改めて認識しました。麹町には、感染症や小児科といった私のキャリアを生かせる患者さんがたくさんいると聞きました。その患者さんたちの総合的な健康管理を担うことができるよう『Patient first』の理念に基づき、クリニックの機能を充実させていきたいと考えています」

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