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アルツハイマー病の治療法確立に向けた基礎研究の展望[特集:医療の近未来予想図]

No.4958 (2019年05月04日発行) P.24

飯島浩一 (国立長寿医療研究センター認知症先進医療開発センターアルツハイマー病研究部部長/名古屋市立大学大学院薬学研究科客員教授)

登録日: 2019-05-01

最終更新日: 2019-04-25

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  • 国内でのアルツハイマー病(AD)患者数は増加の一途を辿っており、ADに対する予防・治療法の確立は急務の課題である。現在のAD研究は、発症の原因と考えられているアミロイドβ蛋白質(Aβ)を標的とした“抗Aβ医薬”の臨床試験が失敗に終わった原因究明から再スタートした。その一番の理由は、臨床試験の時期が遅すぎたこと、つまりAβ蓄積はAD発症の数十年前から始まるため、発症後にAβ病理を減らしても、不可逆的な脳の傷害は回復できなかった、と考えられた。現在、抗Aβ医薬は予防・先制治療薬と位置づけられ、AD初期もしくは発症前に臨床試験を行うための準備が進められている。

    その成功の鍵を握るAD早期診断の実現に向け、これまでに脳脊髄液バイオマーカーや、アミロイドイメージング等による脳画像診断法が実用化された。さらに当センターと島津製作所の共同研究により、脳画像診断と同等の感度でありながら、簡便・安価に診断できる血液バイオマーカー診断法も開発され大きな注目を集めている。この血液診断法の出現により臨床試験に向けた準備が一気に加速し、ADの先制治療法がごく近い将来に確立されると期待される。またADを予防する重要性が広く社会に認識され、運動、栄養、知的活動、社会活動など非薬物療法を用いた予防法の研究も進められている。

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