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未来の医療は予測できるか[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(250)]

No.4958 (2019年05月04日発行) P.67

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2019-05-01

最終更新日: 2019-04-24

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キリのよい連載250回の原稿は何にすべきか、ずいぶん前から考えていた。そうしたところへ、250回を記念して、じゃなくて令和への改元を記念して本誌で「近未来の医療」が特集されることを知った。およばずながら、私も寄稿させてもらっている。

これを逃さない手はない。編集部にお願いして41人の先生方のゲラ原稿を送ってもらった。それを読んでメタ解析、というほどたいそうではないが、ちょっと考えてみようという趣向である。

どの先生も気合いがはいっていて、読み応えは十分。かなり突っ込んだ各論もあれば、SF小説的な話もある。ただ、内容以前に、しょうもないことに気がついた。

人によって漢字の量がずいぶんと違う。漢字が多いと誌面が黒っぽく見える。自分のはえらく明るい。黒っぽさと内容の濃さに相関関係がないことを祈るばかりだ。

バラエティーに富んだ執筆陣なので、テーマはさまざまである。しかし、何人もの先生が共通して取り上げておられるのは、少子高齢化と、わたしも取りあげたAIだ。

この2つが近未来の医療へのキーワードということになるのだろうが、両者には少し違いがある。人口動態はほぼ予測できるのに対して、AIはどのように取り入れられるかがよくわからないという点だ。

予測可能だからといって十分な対応が可能とは限らない。医師数や医療体制など、少子高齢化に向けてどうすべきなのだろう。特に医師数については、その影響が長期にわたるのだから、待ったなしなのに。

AIになると、いよいよわからない。立て続けに、医療におけるAIが専門の先生お二人と対談した。いちばん知りたかったのは、医療におけるAIの展開が予測できるかどうか、である。その答えは、さまざまな要因があるから難しい、であった。

AIに限らず、いろいろなことの進歩が速くなる、ということも多くの原稿に書かれている。そうなると、未来予測がますます難しくなっていく。

未来がどうなるかの予測など不可能と割り切って、ダーウィンの「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることができるのは、変化できる者である」という言葉を嚙みしめながら、地に足をつけて歩むしかないのかもしれませんなぁ。

なかののつぶやき
「晴れて連載250回を迎えました。思い起こせば5年すこし前の連載開始時、まさかこんなに続けることになろうとは夢にも思いませんでした。これも、ひとえにお読みくださる皆様のおかげです。本当に心から御礼申し上げたく存じます。
こうなったら、つぎは500回を目指すぞ、と言いたいところですが、その頃はすでに定年後でありますし、さすがに無理でしょう。どこまでいけるかわかりませんが、ゆるく続けてまいる所存でございますので、今後とも何卒よろしくお願い申しあげまする」

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