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実るほど頭を垂れる[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.87

良沢昭銘 (埼玉医科大学国際医療センター消化器内科教授)

登録日: 2019-01-06

最終更新日: 2018-12-26

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私がドイツのハンブルク大学エッペンドルフ病院内視鏡科に留学したのは、医師10年目の2000年である。かねてから海外に興味があったことに加え、医師10年目にして山口県の片田舎でくすぶっている現状に満足できなかった。当時の上司である山口大学第一内科沖田極教授に相談して、消化器内視鏡分野では世界的に御高名であったSoehendra(ソーヘンドラ)教授のもとに留学させて頂いた。

Soehendra教授は、高校時代までインドネシアで過ごした華僑である。医学部からドイツで学び、その後ドイツ有数の名門大学であるハンブルク大学の教授になることは並大抵のことではない。教授の名声は世界中に轟いており、教室には海外留学生が常に4人以上いるような状態であった。教授は海外講演に招聘されることが多く、年の1/3は海外出張であり、多忙を極めていた。

私がドイツに留学して間もないある日、「今晩教室のメンバーでパーティーをするから、良かったら家族で来ないか?」と誘われた。それからアパートの住所を聞かれ、教授自ら車を運転して迎えに来られた。世界的に御高名な教授にそんなことまでして頂いて随分と恐縮した。教室のメンバーとのパーティーを存分に楽しんだ後、アパートまで送っていくからと言われたが、さすがに申し訳ないので、「タクシーで帰れますので」とお断りしたところ、「そんなことはわかっているが、タクシー代がもったいないから送っていくよ」と。あとで知ったが、私が住んでいたアパートは、教授のご自宅とは真反対の方向である。

教授はすべてがこのような調子で、自分の教室の医師、メディカルスタッフ、海外留学生、メーカー、すべてに対して気を遣う人であった。ドイツ語のほかに、英語も堪能、当然中国語もできるので、世界中の多くの人がSoehendra教授のファンになったことも頷ける。

その後、多くの海外の先生と接することがあるが、「あの教授は威張り散らしているね」、「あの教授は感じがいいね」、というようなことは世界共通の価値観である。「実るほど頭を垂れる……」肝に銘じないと。

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