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学会レポート─2018年欧州心臓病学会(ESC 2018)[J-CLEAR通信(96)]

No.4931 (2018年10月27日発行) P.45

宇津貴史 (医学リポーター/J-CLEAR会員)

登録日: 2018-10-25

最終更新日: 2018-10-24

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8月25日から5日間,ミュンヘン国際見本市会場(ドイツ)にて,欧州心臓病学会学術集会が開催され,世界156カ国から3万3000人弱が集まった。本年度の抄録採択率は40%。昨年同様,投稿数,採択数ともわが国が最多だった(採択率は39%。なお欧米はおおむね50%超,韓国49%,中国44%)。HOTLINEセッションで報告された試験のうち興味深いもの(コラム参照)については,既にWeb医事新報にて速報しているので,ここではそれ以外の話題について紹介したい。

1 安定冠動脈疾患に対するβ遮断薬,Ca拮抗薬の予後への影響は?:CLARIFYレジストリ

多くのガイドラインで,安定冠動脈疾患の症状寛解を目的として推奨されているβ遮断薬とCa拮抗薬(CCB)だが,長期にわたる心血管系(CV)イベント抑制作用は必ずしも明らかではない。そこでEmmanuel Sorbets氏(パリ第13大学,フランス)らは,安定冠動脈疾患例をプロスペクティブに登録したCLARIFYレジストリのデータを用いて,β遮断薬とCCBが安定冠動脈疾患の予後に及ぼす影響を検討した。意外なことに,β遮断薬はCCB同様,長期的な生命予後に有意な影響を与えていなかった。

解析対象となったのは,2009年11月~10年6月に,世界45カ国,2898人の内科医が連続登録した安定冠動脈疾患3万2378例中,CVリスク因子,CV疾患重症度,治療,登録地域,呼吸器疾患合併症の詳細が明らかだった例である。β遮断薬比較コホートは2万2006例,CCB比較コホートは2万2004例となった。なおCCBの79.8%はジヒドロピリジン系だった。

その結果,観察開始時の諸因子を補正後,5年間の死亡率は,β遮断薬「服用」群で7.8%,「非服用」群も8.4%で有意差はなかった〔ハザード比(HR):0.94,95%信頼区間(CI):0.84~1.06〕。「CV死亡」,「CV死亡/心筋梗塞」,「非CV死亡」で比較しても,やはり服用の有無による有意差は認められなかった。ただし,心筋梗塞発症後1年以内にβ遮断薬を開始した3506例のみで比較すると,「服用」群(2931例)では「非服用」群(575例)に比べ,5年間死亡HRが0.68(95%CI:0.50~0.91)と,有意に低下していた。「CV死亡」,「CV死亡/心筋梗塞」も同様だった。死亡率のカプラン・マイヤー曲線は,観察開始後1年を待たず乖離し始め,観察終了時まで差は開き続けた。

一方CCBでは,5年間観察後の「服用」群の死亡率は8.4%で,非服用群(1万6119例)の7.8%と有意差がないだけでなく,心筋梗塞発症後1年以内例のみで比較しても,やはり有意差はなかった。

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