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■NEWS 外国人医療問題で日医が会議 今村副会長、国や行政に未収金補填など費用負担を要望

No.4916 (2018年07月14日発行) P.21

登録日: 2018-07-06

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外国人観光客が急増している。その数は、2017年に2800万人を突破。安倍内閣は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される20年には4000万人突破を目指している。これに伴い、医療機関を受診する外国人観光客に関するトラブルも増加しており、対策が求められている。こうした中、日本医師会は4日、全国の都道府県医師会と問題意識を共有し、総合的に議論することを目的に「外国人医療対策会議」を初めて開催した。日医は今後、会内の委員会で議論を深め、来年秋にも国や行政に提言する方針。

外国人観光客の医療問題を巡っては、自由民主党の「外国人観光客に対する医療プロジェクトチーム」が4月に提言を公表(詳しくは http://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=9850)。これを踏まえ政府の「訪日外国人に対する適切な医療等の確保に関するワーキンググループ」は6月に総合対策を示している(詳しくは http://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=10119)。

■応召義務は大前提、国や行政に費用負担を要望

自民党プロジェクトチームで事務局長を務める自見はなこ参議院議員は「大前提として、応召義務はすべての方にかかる。国籍は問わない」と強調した。その上で、外国人患者の増加は観光立国を目指す国の政策の結果だとして、「国を挙げて外国人観光客への医療提供体制の整備や予算措置を行うよう要望している」と発言。対策の進め方については、日医や都道府県と足並みを揃えていきたいと意欲を見せた。在留外国人への対策も、自民党内の委員会で今月中に議論を詰めていくとしている。

費用負担については今村聡副会長も、国や行政に要望する考えを提示。特に未収金について問題視し、「国の政策として外国人誘致をする動きの中で医療機関に金銭的な負担が発生するのであれば、行政による補填があって当然だ」と述べた。

■かかりつけ医機能の観点から対策が必要

AMDA国際医療情報センターの小林米幸理事長は、外国人観光客の増加を踏まえ、「厚労省は大病院を中心に医療通訳を配置してきたが、外国人診療を特定の医療機関だけで担うのは困難」と指摘。2次医療や3次医療を担う大病院で、軽症の外国人を受け入れることを問題視した。その上で、「開業医を含め、地域の多くの医療機関に参加してもらうことが大事」だとして、かかりつけ医機能の観点から対策する必要を訴えた。

■医療機関、医療者の負担にならないシステム構築を

東大の渋谷健司国際保険政策学教授は、国籍や言葉がアクセスの阻害要因にならないようにすべきだと強調。薬剤耐性の状況や疾病構造は国によって異なるとして、「診たことのない感染症を診療することになる可能性もある」と懸念を表した。その一方で、「“平和”“健康”というのが日本ブランド。どんな国籍の人も医師として診て、日本は良い国だと思ってもらうことが何よりも大切だ」との考えを示した。

訴訟や未収金のリスクに関しては危機感を表し、「通訳や外国語を話せるスタッフの雇用で解決する問題ではない」と強調。診療報酬の設定方法や感染症対策を含め、医療機関や医療者の負担にならない社会システムの設計が必要だと訴えた。

渋谷氏はまた、地域によって訪れる外国人の国籍や観光シーズンなど特性が異なることから地域性を考慮した対応も求めた。

■今年度中にも外国人患者受け入れ拠点病院を選定

地域性の考慮については、厚生労働省医政局の榎本健太郎総務課長も、地域の実状に応じて具体的な取り組みを進める必要があるとの認識を表明。7月末をメドとして各都道府県に対し、外国人患者の受け入れ拠点となる医療機関の選定を依頼することを明らかにした。具体的には、重症例を受け入れられる医療機関を各都道府県で1カ所以上、外国人観光客が多い二次医療圏では軽症例の受け入れ可能な医療機関を選定し、今年度中にも公表する予定だとしている。滞在目的別の外国人患者数、医療通訳、医療コーディネーター翻訳端末の配置状況、現金以外の決済手段の導入状況を含めた未収金対策について、医療機関への実態調査も行う方針。

日医は近く会内に委員会を設け、会議の内容を基に訪日外国人と在留外国人の医療問題に関して、それぞれのワーキンググループで議論を進める。委員会は来年秋にも答申。日医はこれを踏まえ、国や行政に提言するとしている。

日本医師会は今後、会内に設ける委員会で議論を進めつつ、年1回同会議を開催したいとしている

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