食道癌の組織型は,神経内分泌腫瘍など稀で特殊なものを除き,大部分を扁平上皮癌と腺癌が占めており,わが国では特に扁平上皮癌が多い。しかし,腺癌の割合も近年上昇傾向にあるため,スクリーニングの際は飲酒・喫煙歴のない患者でも注意が必要である。また,扁平上皮癌の場合,咽頭癌の合併も多いため,可能な範囲で咽頭も観察する。
診断には画像強調内視鏡が有用である。narrow band imaging(NBI)/blue laser imaging(BLI)等は扁平上皮癌・腺癌ともに有用である。扁平上皮癌はルゴール染色法が有用で,特にpink color signは扁平上皮癌に特徴的な所見である。腺癌は1.5%酢酸散布とインジゴカルミン散布により病変が視認しやすくなる。
治療にあたって,反射の出やすい上部~頸部食道症例や,全周性病変など,処置に長時間を要すると見込まれる症例では,全身麻酔下での治療も考慮する。
前述のルゴール染色法は粘膜障害性が強く,治療当日にかえって病変が視認しにくくなる可能性があるため,注意が必要である。このため,精査時にNBI/BLIで病変境界が明瞭に視認できれば,ルゴール染色法は治療当日まで行わないことも考慮する。当施設では精査時にルゴール染色法を行った場合,治療は1カ月以上あけるようにしている。
ガイドライン上は,術前深達度診断がEP/LPMの全周性病変で長径5cmを超す場合,もしくは術前深達度診断がMM/SM1で全周性病変の場合,外科切除や化学放射線療法が推奨されている1)。しかし外科切除は侵襲度が高く,化学放射線療法では病変の深達度が不明となり,また再発時の治療も困難となる。当院では上記の症例の場合でも,患者の意向と外科の意見をふまえた上で,内視鏡的切除についても慎重に検討することにしている。
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