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インスリン自己注射

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-13
尾形幸子 (谷本医院)
谷本光生 (谷本医院院長)
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  • ■導入の考え方

    在宅医療においてインスリン導入を検討する場合には,合併症の状態や導入に伴うリスクを考えるだけではなく,患者の生活環境や周囲の介護力をふまえた慎重な検討が望まれる。

    一般診療における血糖管理やインスリン導入の詳細については,科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013(日本糖尿病学会編)や成書などを参照されたい。

    ■状態の把握・アセスメント

    【注意点】

    独居患者や認知症患者などでは,服薬管理ができていないことで血糖コントロールが不良となる症例もある。したがって,まず患者の生活を再度把握するべきである。

    在宅医療現場では,たとえ薬を分包したとしても,1週間分まとめて内服してしまう例が存在することも考慮し,安易にインスリンを導入することのないよう慎重に適応を判断する。

    【フィジカル】

    インスリン療法の絶対的適応:①1型糖尿病,②糖尿病昏睡(糖尿病ケトアシドーシス昏睡,高浸透圧高血糖症候群),③重症感染症の併発,中等度以上の外科手術(全身麻酔施行例など)の際,④糖尿病合併妊娠(妊娠糖尿病で,食事療法だけでは良好な血糖コントロールが得られない場合も含む)。

    インスリン療法の相対的適応:①著明な高血糖(たとえば,空腹時血糖250mg/dL以上,随時血糖350mg/dL以上)を認める場合や,ケトーシス(尿ケトン体陽性など)傾向を認める場合,②経口血糖降下薬療法では良好な血糖コントロールが得られない場合(スルホニル尿素薬の一時無効,二次無効など),③重症の肝障害,腎症患を有する例で,食事療法でのコントロールが不十分な場合はインスリン治療が望ましい。

    実際の在宅医療では,認知症や脳梗塞後などの併発疾患のため,食事摂取が不安定であることも少なくない。したがって,過度の高血糖や低血糖などのリスクを軽減するために,ある程度食事摂取が一定であり,むらが少ない状態であることも重要である。

    【メンタル】

    本人や家族がインスリン注射の必要性をある程度理解し,高血糖,低血糖,シックデイの場合の対処法について理解しようと取り組む姿勢がみられることが必要である。

    インスリン療法の相対的適応であっても,糖尿病治療として受け入れていない場合や,認知機能の低下や視力障害,心理的状態(抑うつ,不安など)により注射手技の習得が困難で,それをサポートすることができる生活環境にない場合には,なるべく導入を避けるべきである。

    【介護力】

    在宅患者では,低血糖症状などを患者自身が訴えられない状態であることも多く,本人や家族などが血糖自己測定(SMBG)可能であることが望ましい。

    老老介護や認認介護などで家族が異変に気づけないこともあるため,特に高齢患者の場合には家族の認知機能や精神状態の評価も必要である。

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