株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

先天性心疾患と妊娠・出産【心機能,遺残病変,続発病変からのリスク評価が重要】

No.4905 (2018年04月28日発行) P.52

北市 隆 (徳島大学心臓血管外科准教授)

北川哲也 (徳島大学心臓血管外科教授)

登録日: 2018-04-28

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

心疾患を有する女性の妊娠・出産で重要なことは,妊娠・出産が母体の循環動態へ及ぼす影響である。循環血漿量は,妊娠28~32週頃に妊娠前の約1.5倍に増加する。心拍出量は,妊娠20~24週頃に最大となる。また,妊娠後期には,凝固因子が増加・活性化するため血栓・塞栓症が増え,エストロゲンの影響で大動脈壁は脆弱性を増す。

これらの生理的変化を鑑み,妊娠の際に厳重な注意を要する,あるいは妊娠を避けるべき病態として,①肺高血圧症,②流出路狭窄,③心不全,④Marfan症候群,⑤機械弁,⑥チアノーゼ性疾患,が挙げられる1)

心房中隔欠損症や心室中隔欠損症のような非チアノーゼ性心疾患では,未修復で心不全や肺高血圧症をきたさずに成人期に達した場合や修復術後には,一般妊娠と同様に妊娠・出産・経腟分娩が可能である。しかし,中等度以上の遺残短絡や続発症がある場合には,妊娠前の修復や再手術が推奨される。酸素飽和度が85%以下のチアノーゼ性心疾患では妊娠前の修復が必須であるが,良好に修復されたFallot四徴症の妊娠・出産リスクは一般妊娠に近い。心機能が良好なFontan手術後であれば妊娠・出産は可能であるが,中心静脈圧が高く,容量負荷に弱く,易催不整脈性があり,凝固能亢進といった循環特性から,リスクは高い。

先天性心疾患を持つ女性の妊娠・出産においては,個々の症例の心機能,遺残病変,続発病変からリスクを評価し,指導することが重要である。

【文献】

1) 日本循環器学会, 他:心疾患患者の妊娠・出産の適応, 管理に関するガイドライン(2010年改訂版).

【解説】

北市 隆*1,北川哲也*2  *1徳島大学心臓血管外科准教授 *2同教授

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top