2017年6月に一般社団法人日本医学会連合/日本医学会の会長に就任した門田守人氏は、第3期がん対策推進基本計画(9頁図)を取りまとめた時の厚生労働省「がん対策推進協議会」の会長も務めていた。第3期計画と今後の医学会の舵取りについて聞いた。
3期目というと、5年ごとの見直しの3回目と理解されるのが一般的ですが、私は協議会の委員に、10年の経験を経て「新しい10年をスタートさせる気持ちで議論しましょう」と呼びかけました。
1期目はがんの年齢調整死亡率(75歳未満)を10年間で20%減らすことと、患者と家族の苦痛の軽減、療養生活の質の維持向上を目標にしましたが、これは医療中心の目標でした。しかし、患者さんが抱える問題は医療だけではないので、2期目は就労問題やがん教育といった社会全体に対策の方向性を広げました。
死亡率減少の目標は「禁煙」「検診」「医療の進歩」の総和として達成する見込みでした。医療に関しては、拠点病院が整備されるなど成果が上がりましたが、喫煙率はほとんど下がらず、検診受診率はほとんど上がらない。その結果として、死亡率の減少は15.6%にとどまり目標値まで下がらなかった。これが10年間の反省です。
そのため、3期目は対策に時間軸を加え「未来のためのがん対策」に重点を置き、全体目標の1番目に1次予防・2次予防(検診)を掲げました。本格的に予防に取り組まないと10年間の反省にならないというのが3期目の一番のメッセージです。1次予防に関しては、がんの3分の1は喫煙が関係しているので、まず禁煙。そして、子宮頸がんや胃がん、肝がんを予防するための感染症対策が必要です。ところが、禁煙に関しては腰砕けになってしまった。
実に腹立たしいですね。世界的にみても、これほど禁煙対策が遅れている国は珍しい。例えば、飛行機に搭乗中の完全禁煙は可能なのに、なぜ飲食店での数時間の禁煙がこれほど議論になるのか分かりません。国民の健康を守るためには受動喫煙が大きなマイナスになることが科学的に明らかなのに、なぜ受動喫煙対策を徹底しないのか。しかも受動喫煙を認めるような厚労省案が報道されています。今後人口の高齢化が進み医療費も増加し続ける中で、禁煙対策を進めたら税収が減るなんていうごまかしはいけません。