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医療者のための熱中症対策Q&A【電子版付】

現場で迷う熱中症対策の疑問を解消

定価:4,950円
(本体4,500円+税)

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編著: 三宅康史(帝京大学医学部救急医学講座 教授、帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター長)
判型: B5判
頁数: 208頁
装丁: 2色刷
発行日: 2019年06月15日
ISBN: 978-4-7849-5586-2
版数: 第1版
付録: 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます)

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もはや日本の「国民病」とも言える熱中症
2018年の猛暑を踏まえ、現場で迷う対応の疑問に専門家が答えます!

◆熱中症が起こるメカニズムや患者の年代・シチュエーション別の対策、予防・治療・予後の管理方法、合併症を持つ患者さんへの対応、リスク管理など、熱中症対策の要点を各領域の専門家がエビデンスをもって解説します。医療者が必要とする診療情報に加え、患者さんの正しい理解を促す予防指導・情報発信にも役立つ内容を多数盛り込みました。

◆「熱中症はなぜ起こるのか?」「どんなリスクがあるのか?」といった基礎的な知識から、「高齢者施設で注意する点は?」「学校の屋外行事を中止する基準は?」「熱中症は労災になるのか?」など個別具体的な状況への対応まで、場面ごとに必要な対策とその根拠となる考え方をQ&A形式で解説しています。

◆2020年に国内で開催されるオリンピックなど大規模なスポーツイベントも念頭に、競技別の特徴や学校での部活動、あるいは観戦時のリスク、大会やイベント開催に伴う注意点など、熱中症とスポーツの関わりについても解説しています。

目次

第1章 熱中症の概要:疫学・メカニズム
Q1 熱中症はなぜ起こるのでしょうか?
Q2 熱中症のリスクが高い気象条件はありますか?
Q3 熱中症による死亡例にはどのような特徴がありますか?
Q4 熱中症ではなぜ塩分(ナトリウム:Na)補給が重要なのでしょうか?
Q5 最近の日本における熱中症の特徴にはどのようなものがありますか?
Q6 最近の日本における熱中症の実態調査はどのように実施されているのでしょうか?
Q7 WBGTとは何ですか?

第2章 熱中症の診断と管理・治療
Q8 熱中症で入院が必要なのはどういう状態ですか?
Q9 熱中症の診断に役立つ特徴的な症状を教えてください
Q10 熱中症との鑑別で注意すべき疾患は?
Q11 熱中症による後遺症について教えてください

第3章 標準的な啓発・指導・予防対策
Q12 冷房の設定温度は何度にすべきですか?
Q13 熱中症予防にどのような食生活が有効ですか?
Q14 水分補給に適した温度はありますか?
Q15 水だけで水分補給を行うのは危険ですか?
Q16 暑い環境に出る前にはどのような点に注意すべきですか?
Q17 冷房や避暑によって涼しさに慣れてしまうと熱中症のリスクは上がりますか?
Q18 夜間でも熱中症になりますか?

第4章 急性症状出現時の対応
Q19 注意すべき初期症状としてどのような特徴がありますか?
Q20 熱中症を疑ったときに,まず行うべき応急処置の手順・方法を教えてください
Q21 救急車を呼ぶべき状態は?
Q22 意識がない場合はどのような対応が必要ですか?
Q23 常備しておくべき物品や薬剤にはどのようなものがありますか?
Q24 効果的な冷却の仕方を教えてください
Q25 冷却の目安時間や目標温度はありますか?
Q26 血管内冷却カテーテルによる深部冷却は急性期の治療手段として有効ですか?

第5章 高齢者への対応
Q27 高齢者の熱中症の予後について教えてください
Q28 高齢者施設でケアするときの注意について教えてください
Q29 基礎疾患のある高齢者の水分摂取について注意すべき点,経口摂取できない高齢者への対応を教えてください

第6章 合併症を持つ患者への対応
Q30 熱中症にはどのようなリスクファクターがありますか?
Q31 熱中症との合併で注意すべき疾患はありますか?
Q32 食事制限がある患者ではどのような対策が必要ですか?
Q33 熱中症に特に注意が必要な薬剤はありますか?

第7章 小児・学校現場への対応
Q34 成人と小児で熱中症のなりやすさは違うのでしょうか?
Q35 乳幼児の熱中症対策について特に注意すべき点はありますか?
Q36 学校の屋外行事を中止する基準はありますか?
Q37 屋内の活動でも熱中症は起こりますか?
Q38 プールでも熱中症は起こるのでしょうか?
Q39 乳児の水分補給はミルクや母乳だけでよいのでしょうか?

第8章 スポーツ現場での対応
Q40 運動の禁止はどのような基準で判断すべきですか?
Q41 運動中の水分補給はどのように行うと効果的ですか?
Q42 夏季に大会やイベントを行う場合にはどのような対策が必要ですか?
Q43 特に熱中症のリスクが高い競技はありますか?
Q44 パラ競技の指導では特別な配慮が必要ですか?
Q45 夏季の運動はどのような服装で行うべきですか?

第9章 労働現場での対応
Q46 屋外作業時はどのような点に注意が必要ですか?
Q47 冷房が効いた屋内の作業であればリスクはありませんか?
Q48 熱中症は労災として認定されますか?
Q49 労働現場での熱中症対策で特に注意すべき点は何ですか?
Q50 労働現場での熱中症は中・高年者に多いのでしょうか?
Q51 事業所に義務づけられている熱中症対策はありますか?
Q52 職場で備えておくべき設備や立てるべき予防策にはどのようなものがありますか?

第10章 患者からのよくある質問
Q53 暑い日の校外活動で熱中症を予防するにはどうしたらよいでしょうか?
Q54 熱中症が心配される時期にはどのような服装をすべきですか?
Q55 熱中症予防のために乳幼児の服装で気をつけるべきことはありますか?
Q56 スポーツ時の熱中症予防にコンプレッションインナーは効果的なのでしょうか?
Q57 外出中に熱中症と思われる状況に陥った場合に,救急車を呼んでよいのか悩みます

topics 
世界的な異常気象と熱中症 
熱中症と行政の対応 
症例検討:剣道の練習中に熱中症で倒れ死亡した17歳の男子高校生 
在宅医療現場の熱中症 
熱中症予防啓発活動への取り組み:「熱中症ゼロへ」プロジェクト 
JAFによるミニバン(条件別)の炎天下での車内温度の変化

column 
冷夏や冬にも熱中症患者が発生するのか 
水,スポーツドリンク,経口補水液の使い分けは 
熱中症になりやすい人とは 
筋肉痛と筋痙攣 
熱中症における長期的な影響 
熱中症で水中毒になる? 
経口補水液が飲めない場合はどうするか? 
救命救急センターでの重症例に対する治療の流れ 
熱中症の最新情報収集に役立つWebサイト 
肥満は熱中症のリスクになるのか? 
頑固な筋痙攣の対処方法 
暑熱順化とは? 
オリンピック・パラリンピックに向けての熱中症対策 
屋外競技場に家族でスポーツ観戦に行く前にできる熱中症対策は? 

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序文

残念ながら,暑い夏はまたやってくる。必ず……。

日本の夏はもはや猛暑が常態化している。そして,暑ければ熱中症になる人が増えるのは当然といえる。さらに悪いことに,熱中症重症化の大きなリスクファクターである高齢化,貧困化,孤立化は,日本国内で徐々にではあるが確実に進行している。
平成最後となった2018年の夏は近年になく暑かった。総務省消防庁発表の熱中症患者救急搬送数(本書第1章 Q6 p.22の図1①)などの数字を見れば,2018年がいかに酷暑であったかがよくわかるだろう。
しかし,だからといって「夏は部屋にこもって冷房の中で過ごそう」「真夏の部活動はすべて休ませよう」「危険だから屋外作業は全面中止」などとなっては,暑さに強い身体作りも,スポーツ能力の向上や夏季の大会での好成績も望めなくなるし,そもそも夏期の経済活動そのものが成り立たなくなる。ひいては有意義な人生を送ること自体が難しくなってしまうだろう。
では,猛暑日や熱帯夜でも熱中症にならず,安全かつ効率的に部活動や肉体労働に勤しむためにはどうすればよいのだろうか……? その答えが本書の中にある。
本書の最大の特徴は,熱中症に関連する情報を一から十まで,専門的な内容(医療者目線)と平易な文章(一般人目線)を組み合わせて記載している点である。執筆をお願いした先生方には,医療関係者以外の方々にもスラスラ読めるように,医学的・専門的な内容を平易な言葉で記載頂くようお願いしてある。Q&A形式で, 興味のあるところ,気になるところから読んでも十分理解が深まるような構成になっているのもポイントである。
医療従事者の方々には,最新のエビデンスを取り込みつつ診断・治療・予防指導などを行うためのテキストブックとして。教師や養護教諭,スポーツ指導者,企業の安全管理者など現場で指導する立場の方々には,各現場で早期発見,応急処置,予防のための環境整備やプログラムの調整,活動当日の危険性を予測するためのマニュアルとして。さらに,報道関係者や行政職の方々には,熱中症そのものを知るための,本邦における基礎情報,最新の疫学的情報源として,ぜひ本書をお役立ていただきたい。

繰り返しになるが,2018年のような暑い夏はまた必ずやってくるのである。準備を怠りなく。

帝京大学医学部救急医学講座 教授,帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長 三宅康史

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正誤情報

下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。

・ 35ページ topics 世界的な異常気象と熱中症 文献2)の参照URL

〈誤〉「https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/monitor/annual_2018」→〈正〉「https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/monitor/annual/annual_2018」

※電子版では修正されています

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・ 175ページ 第9章 Q52 文献1)の参照URL

〈誤〉「https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000485072.pdf」→〈正〉「https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000483089.pdf」

※電子版では修正されています

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・ 131ページ 第7章 Q39 幼児に対するORSの投与量(p.131の4行目)

〈誤〉「幼児には1日300~600mL/kg」→〈正〉「幼児には1日300~600mL」

幼児への投与量にある/kgの表示は不要です。ただし、乳児への投与量は記載の通り30~50mL/kgが推奨値となります。

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