No.5291 (2025年09月20日発行) P.71
登録日: 2025-09-11
最終更新日: 2025-09-12
日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会の三師会は9月11日、賃金上昇と物価高騰で悪化する病院の経営状況への対応を求める要望書を福岡資麿厚生労働相に提出した。補助金による早急な支援、期中改定も含めた診療報酬改定による安定した財源の確保を求めた。
要望書では、2025年度最低賃金は5.97%増、「骨太の方針2025」で示された春季労使交渉の平均賃上げ率は5.26%であることに触れ、診療報酬は賃上げの状況に追いついておらず、医科歯科医療機関、薬局等はこうした賃上げに対応できる経営状態にないことを強調。今年度中の財政支援の必要性を訴えた。
同日はさらに「オンライン資格確認の機器更新費等の補助に関する要望書」も提出した。
オンライン資格確認については23年5月から導入が原則義務化されたが、資格確認端末や顔認証付きカードリーダーを早期に導入した医療機関は機器の保守期限を迎えつつある。要望書では、物価高騰の影響で更新費用が導入時よりも大きな負担となり、更新を機に閉院を考える医療機関、薬局の増加が想定されるとして、地域医療の崩壊につながるとの危機感を示し、更新費用の全額補助を強く要望した。
要望書を手渡す三師会会長らと福岡資麿厚労相(中央)、田村憲久衆院議員(右から2人目)
終了後、報道陣の質問に応じた日本医師会の松本吉郎会長は、病院の約7割が赤字とした上で、「医療機関の経営逼迫は病院だけの問題ではなく、診療所も4割が赤字。今年度は5割を超える診療所が赤字に転落するとの予測もある」と危機感を示した。
さらに10月4日に投開票を控える自民党総裁選の影響については、補正予算成立の遅れが予想されるとの見通しを述べ、「医療法人はどんどん経営状況が厳しくなっている。補助金は即効性があるが、安定的な財源として診療報酬は非常に大きい。あくまで両面で迅速な対応を強く求めたい」と語った。
松本会長は、福岡厚労相が要望に対し「政局がどうなるかは不透明だが、次にしっかりとつなげていく」と回答したと明らかにした。