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加速する医療AI実装と戊戌[お茶の水だより]

No.4888 (2017年12月30日発行) P.16

登録日: 2017-12-26

最終更新日: 2017-12-26

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▶2017年の干支は丁酉(ひのととり)だった。丁酉には、技術革新にまつわる出来事が起こると言われ、「革命の年」の異名をとる。例えば、60年前の丁酉の年に始動した「原子力平和利用懇談会」は、原子力発電の国内導入に先鞭をつけた。
▶今年、骨太方針や成長戦略には、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く第5の社会「Society5.0」の実現を目指すことが書き込まれた。人工知能(AI)を活用して少子高齢化や過疎化などの課題を克服するとの方針が強調された。
▶医療現場でのAI実装の動きも加速している。厚生労働省の有識者懇談会が6月に公表した報告書は、「個人的な感情」などに対応しきれないという限界から、問診等への実用化は現時点で困難としたが、画像診断支援や医薬品開発、ゲノム医療には早期の実用化が見込めると評価。「第3期がん対策推進基本計画」では、がん個別化医療の実現に向けたAIの積極的活用が掲げられた。
▶政府が次々に打ち出す「革命」の名を冠した看板政策にも、「AI」の文字が躍る。AI革命は医療界を巻き込みつつ、ますます止めがたい奔流となり、2018年になだれ込む。2018年の干支は戊戌(つちのえいぬ)だ。戊は「茂」に通じ繁栄を暗示する。一方、戌は刈り取られた作物の“終わり”を象った字で、水と火を加えると「滅」となる。正しく使えば繁栄をもたらし、応用方法を誤れば滅びを招く。原子力もAIも恐らく同じだろう。
▶前出の報告書は、診断支援にAIが導入されても、人間(医師)による最終判断の必要性は残るとする。医療AIが真に福音をもたらす存在となるよう現場の医師と国民が技術の光と影を見つめ、議論を深める。そんな戊戌の年を迎えたい。

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