厚生労働省は15日、医道審議会の医師臨床研修部会に対し、卒後臨床研修のマッチングで地域枠学生に限定した選考ができる臨床研修病院の創設を提案した。2019年度の医師臨床研修マッチング(用語解説)から導入する方針。
2016年度の医学部入学定員9262人のうち、地域枠学生は1617人(17.5%)を占め、地域枠出身医師は年々増加している。一方、臨床研修病院の募集定員倍率は、研修医の都市集中を抑制する観点から、2020年度に向けて1.05倍まで圧縮する方向性が決まっている。現状では地域枠学生が一般枠学生と同時にマッチングに参加しており、今後、診療義務のある地域の病院にマッチできない事態が起こる可能性が指摘されている。
厚労省の提案では、地域医療に配慮した研修プログラムを設けているなどの要件を満たす臨床研修病院を、都道府県が「地域密着型臨床研修病院(仮称)」に指定。同病院では、通常のマッチング参加登録開始前(5月頃)に、地域枠学生に限定した募集・選考が可能になる。限定選考枠は募集定員の2割までとする。限定選考で不採用となった地域枠学生は、通常のマッチングに参加する。
厚労省は、限定選考枠の利点について「地域枠学生にとっては通常より早く研修先を決められ、病院にとっては地域医療への情熱を持った学生を早く採用できる」と説明した。ただ、指定基準となるプログラム例として示された「6カ月以上の地域医療研修」に対しては、委員から「長すぎる」「一般枠の研修との違いが出すぎると地域枠の人気が下がる」などの異論が相次ぎ、同省は修正する考えを示した。
【医師臨床研修マッチング】:次年度から卒後臨床研修を受けようとする医学生等と、臨床研修を行う病院の研修プログラムを、互いの希望を踏まえ、一定のアルゴリズムに従いコンピュータで組み合わせを決定するシステム。臨床研修の必修化に伴い導入された。
委員からは「地域密着型病院には人気病院を指定すべきではないか」との声も上がった