編集: | 駒澤伸泰(大阪医科薬科大学医学部医学教育センター 副センター長,講師) |
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監修: | 中野隆史(大阪医科薬科大学医学部医学教育センター センター長,微生物学 教授) |
判型: | A5判 |
頁数: | 304頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2022年01月08日 |
ISBN: | 978-4-7849-4191-9 |
版数: | 第1 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
医師になるのはたいへんです。理解すべき知識量は膨大ですし,手術や処置など技能の修得も必要です。そして何より,患者や多くの医療関係職種と触れ合う仕事ですから,人間性とプロフェッショナリズムを身につけることが必須です。そのような医師を「育てる」ための「医学教育」が重要であることは言うまでもありません。
しかしながら大学教員には,初等中等教育者に必要な「教員免許」のようなものは必須ではありません。我々は教育学部で教育学・教育理論を学んだような「教えるプロ」ではないのです。経験的に培われてきた「職業人教育」の要素,つまりプロがプロを育てる教育が現在の医学部教育でも脈々と受け継がれています。「背中を見て学ぶ」とか「技術を盗む」とか「見習い」といった言葉は歴史的な職業人教育の象徴ですが,このような要素はいまだ医師養成課程には存在しています。今,医学部の高学年で行っている診療参加型臨床実習のことを「クリニカル・クラークシップ(clinical clerkship)」と呼んでいますが,clerkとはもともとは「書記」のことであり,徒弟制の名残を感じさせます。
一方で,欧米から新しい医学教育理論がどんどん紹介されています。さらに医学教育分野別認証評価によって,わが国の医学部も世界共通基準をもとにして評価される時代がやってきました。単なる職業人教育にとどまらず,教育理論に裏打ちされた,言うなれば「evidence-basedな医学教育」を実践する必要があります。かといって,我々は「教えるプロ」ではないのです……どうすればよいのでしょうか。
このような状況下において,本書の存在意義があるものと考えます。
本書では,まず現在の医学教育における「トレンド」を解説します。そして最新の医学教育理論についてわかりやすく説明します。さらに,そのような考え方に基づいて実際に医学教育を実践するにあたって必要な,現場での教育スキルや具体的な事例を紹介する,という構成になっています。この構成は本書の編著者であり,本学医学教育センターで活躍されている副センター長・駒澤伸泰先生のアイディアです。先生の医学教育における豊富な経験と理論によって生み出されたものであると感じました。きわめて実践的であるとともに,最新の教育理論がしっかりと解説されています。
本書を医学教育に携わるすべての方に推薦致します。