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体内時計と健康、研究のさらなる隆盛を願う[お茶の水だより]

No.4876 (2017年10月07日発行) P.18

登録日: 2017-10-05

最終更新日: 2017-10-05

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▶今年のノーベル医学・生理学賞の栄誉は、米国のジェフリー・ホール、マイケル・ロスバッシュ、マイケル・ヤングの3博士に輝いた。サーカディアンリズム(概日リズム)を生み出す体内時計の機構を分子レベルで解明した業績が評価された。3年連続の日本人受賞とならなかったことはさておき、3氏の打ち立てた偉業に賛辞を送りたい。
▶3氏はショウジョウバエをモデル生物に用いて、periodと呼ばれる概日リズムを司る時計遺伝子を同定した。ホール氏とロスバッシュ氏は1984年、periodによって特定の蛋白質が夜間に細胞内に蓄積され、日中に分解されるという特有の周期的変動を発見。さらに、ヤング氏は94年にtime-lessという別の時計遺伝子を同定した。
▶その後、日本を含む世界各国の科学者によって、時計遺伝子とその機能が、マウスやヒトでも共通していることが分かった。カロリンスカ研究所が「健康福祉に関わる重要な研究分野に発展した」と評価したように、体内時計と睡眠や体温、内分泌代謝の調節との関連が明らかになっているほか、ゲノム解析により、いわゆる「現代病」と呼ばれるさまざまな疾患との関連も見出されている。
▶研究成果を臨床利用することへの期待も大きい。予防医学分野では、時計遺伝子と脂肪代謝の関連に着目した健康指導への応用が提唱されている。時計遺伝子をマーカーとして、最も効果を発揮する時間帯を狙って薬剤を投与する「時間治療」という治療概念も、近年注目を集めつつある。
▶日本は体内時計と健康に関する研究を主導している国の1つだ。臨床利用のことばかり取り立てるのは野暮かもしれないが、3氏の切り拓いたこの分野に、今後も多くの功績が花開くことを願う。

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