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国際幹細胞学会による未検証の幹細胞治療を行う際のインフォームド・コンセント基準─再生医療法下で提供される治療に関する説明事項への示唆[提言]

No.5057 (2021年03月27日発行) P.52

藤田みさお (京都大学iPS細胞研究所 上廣倫理研究部門 部門長 特定教授/京都大学高等研究院 ヒト生物高等研究拠点)

一家綱邦 (国立がん研究センター 社会と健康研究センター 生命倫理・医事法研究部 医事法研究室室長)

八田太一 (京都大学iPS細胞研究所 上廣倫理研究部門 特定助教)

登録日: 2021-03-26

最終更新日: 2021-03-23

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  • 〔要旨〕2019年8月,国際幹細胞学会は幹細胞を用いた未検証の介入を臨床試験や新規性の高い未確立医療技術の枠外で行う際に,患者に説明すべき内容を基準としてまとめた。同基準は,現在進行中の再生医療法の改正に向けた議論に重要な視座を与えるだろう。本稿では,再生医療法下で提供される治療に対するインフォームド・コンセントの問題を,同基準に照らして論じ,患者への説明事項の具体化・明確化が今後の課題であることを指摘する。

    1 はじめに:「治療」として行われる再生医療とは?

    幹細胞には自ら増殖し続ける自己複製能と様々な細胞に分化する分化能がある。そのため,幹細胞や幹細胞由来の新しい細胞を患者に投与し,機能しなくなった細胞と置き換えることができれば,従来治癒の望めなかった疾患の治療が可能になると期待されている。既に安全性や有効性が確立した「標準治療」としては,「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」に基づく血液がんへの造血幹細胞移植と「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」の承認を得た再生医療等製品がある。これ以外で人に幹細胞を投与する行為は,安全性や有効性が未検証の介入(unproven stem cell-based interventions)に該当し,「臨床試験」「未検証の治療」「新規性の高い未確立医療技術(medical innovations)」に大別することができる1)2)。「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(以下,再生医療法)」では,再生医療を「研究」又は「治療」として提供することが認められている。ここでいう「治療」は国際的には「未検証の治療」と「新規性の高い未確立医療技術」に該当するが,後者は特に,他に有効な治療がないごく少数の重症患者を対象にした例外的な救済措置を指す。

    2019年8月,国際幹細胞学会は臨床試験や新規性の高い未確立医療技術の枠外で幹細胞を用いた未検証の介入を行う際に,患者に説明すべき内容を「正式な臨床試験の枠外で幹細胞を用いた介入を行う際のインフォームド・コンセント基準(以下,基準)」としてまとめた(表1)3)4)。背景には,科学的エビデンスがない高額の幹細胞治療を受けて,被害に遭う患者が各国で後を絶たない現状がある5)。日本では,再生医療法の施行から5年が経った2019年より,厚生科学審議会(再生医療等評価部会)が法律の改正に向けた検討を始めた。幹細胞を用いた未検証の治療に関する説明内容を明確化した国際幹細胞学会の基準は,この見直し議論に重要な視座を与えるだろう。そこで本稿では,この基準に照らして,再生医療法の施行規則(以下,施行規則)が定める患者への説明事項を検討し,再生医療法下で提供される治療に対するインフォームド・コンセントの問題を論じる。

    表1 正式な臨床試験の枠外で幹細胞を用いた介入を行う際のインフォームド・コンセント基準4)

    残り3,208文字あります

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