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認知症ではないが介助を要する患者への日常生活自立度判定

No.4689 (2014年03月08日発行) P.62

本間 昭 (お多福もの忘れクリニック)

登録日: 2014-03-08

最終更新日: 2017-09-08

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【Q】

認知症高齢者の日常生活自立度の判定について,認知症と診断されていない患者,たとえば認知症のない脳卒中の片麻痺の患者で,手助けが必要な場合には,Ⅲと判定することができるか。お多福もの忘れクリニックの本間 昭先生に。(東京都 K)

【A】

認知症がない場合には,認知症高齢者日常生活自立度では「自立」となり,日常生活上何らかの介助を要する場合には障害高齢者の日常生活自立度を用いる

質問では認知症と診断されていない患者,あるいは認知症のない患者とあるが,両者は同一ではない点に留意が必要である。後者の場合,認知症高齢者日常生活自立度では「自立」となり,日常生活上何らかの介助を要する場合には障害高齢者の日常生活自立度(表1)を用いる。前者には,まず認知症があるかどうかの診断をすることになる。入院あるいは入所している患者では専門医の判断を仰ぐことが困難な場合も多いが,「主治医意見書記入の手引き」の「3.心身の状態に関する意見」,「(2)認知症の中核症状」を参考にチェックすることができる。

平成21年度版「主治医意見書記入の手引き」では,中核症状の短期記憶を確認する例として,「身近にある3つのものを見せて一旦,それをしまい,5分後に聞いてみる等の方法を用いて」判断するとある。長谷川式簡易知能評価スケール(HDS–R)やミニメンタルステート検査(Mini–Mental State Exami­nation;MMSE)の遅延再生課題がそれに相当する。アルツハイマー型認知症では,さっきの出来事記憶の障害が特徴的な症状であるため,このような方法が有効とされる。前頭側頭型認知症の初期では出来事記憶の障害がみられないこともあり,このような例では認知症があっても,短期記憶の障害はないとなるが,本疾患の頻度は1〜2%程度である。

日常の意思決定を行うための認知能力は4段階で評価される。日常生活において首尾一貫した判断ができる,毎日すべきことに対して予定を立てたり,状況を判断できる場合は「自立」となる。これ以下の場合には程度に応じて,「いくらか困難〜判断できない」となる。自分の意思の伝達能力も4段階で評価される。自分の考えを容易に表現し,相手に理解させることができる場合が「伝えられる」となる。それ以下の場合には,障害の程度に応じて,「いくらか困難〜伝えられない」となる。

中核症状の判断では,“90歳なんだからこのくらいでも自立であろう”という年齢相応の視点は含まれていない。さらに,これらの基準は認知症の重症度と必ずしも一致するものではないが,認知症であれば一般的には短期記憶の障害があり,いくらか困難は軽度認知症,見守りが必要/具体的要求に限られるは中等度認知症,判断できない/伝えられないは重度(高度)認知症の障害におよそ相当すると考えることもできる。

【参考文献】

平成18年1月19日老老発第0119001号厚生労働省老健局老人保健課長通知
[http://www.pref.mie.lg.jp/CHOJUS/HP/kaisei/other/nintei2.pdf]

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