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難治性てんかんにおける食事療法(ケトン食療法)【薬剤が効かない小児難治性てんかんに有効な低糖質,高脂質食】

No.4871 (2017年09月02日発行) P.52

伊藤 進 (東京女子医科大学小児科)

登録日: 2017-08-30

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難治性てんかんにおける食事療法の歴史は,紀元前のHippocratesによる断食にまで遡るが,1921年にWilderが極端な低糖質および高脂質の食事が断食同様にてんかんに有効であることを報告し,体内にケトン体が産生されることから「ケトン食療法」と名づけられた。その後,抗てんかん薬にいったん取って代わられたが,94年にメディアに紹介されたことをきっかけに,種々の抗てんかん薬で抑制できない小児難治性てんかんに有効であることが再度注目されるようになった。さらに,98年には多施設共同前方視的研究,2008年には無作為化比較試験により有効性が再確認され,16年のCochraneレビューでも「妥当な選択肢(valid option)」と評価された。

ケトン食療法は,脂質と非脂質(糖質および蛋白質)の重量比を4:1ないし3:1とした「古典型ケトン食療法」と,糖質を10g程度に制限する「アトキンス食変法」が主流となっている。当科では,1968年から古典型ケトン食療法,2007年からアトキンス食変法をわが国で初めて導入し,これまでに100人以上の患者に実施している。

小児難治性てんかんにおける古典型ケトン食療法の有効性は,50%以上発作減少18~50%,90%以上発作減少10~27%,発作抑制5~10%とされるが,忍容性から継続率は33~55%とされ,成長や心血管などへの長期的な副作用も課題となっている。わが国では2016年4月に「てんかん食」として保険適用され,小児患者のみならず成人患者にも試みはじめられている。

【参考】

▶ Ito S, et al:Brain Nerve. 2011;63(4):393-400.

【解説】

伊藤 進 東京女子医科大学小児科

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