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(6)パニック障害【第2章 用語解説】[特集:向精神薬 総まとめ]

No.4709 (2014年07月26日発行) P.81

坂元 薫 (東京女子医科大学精神医学教室教授)

登録日: 2016-09-01

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▶疾患概念

動悸,発汗,身震い,窒息感,胸痛,嘔気,めまい感,現実感消失,死の恐怖などの症状が突然出現するのがパニック発作である。予期しないパニック発作の反復がみられることがパニック障害の診断には必須である。
パニック発作は,物質使用または一般身体疾患によって生じることがあるため,これらを除外することがパニック障害の診断上必要である。パニック発作を生じる可能性がある身体疾患としては,虚血性心疾患,甲状腺機能亢進症,褐色細胞腫,前庭機能不全,痙攣性疾患,気管支喘息などがあり,鑑別のためには適切な身体的検索が必要である。
一方,身体疾患とパニック障害が合併することも稀ではなく,特に,虚血性心疾患の患者においては,約20%にパニック障害が合併するという報告がある。一般人口におけるパニック障害の生涯有病率が2~3%であることを考え併せると,虚血性心疾患患者におけるパニック障害の合併率がいかに高いかがわかる。なお,パニック障害に最も高率に合併する精神疾患は大うつ病性障害であり,合併率は約60%と報告されている。
過換気症候群とパニック障害の異同を明確に回答できる医師が少ない現状ではあるが,両者はほぼ同一の疾患である。両者が一致しない場合として,過呼吸症状を伴わないパニック発作を呈するパニック障害の場合や過呼吸症状はあるが,パニック障害の基準を満たさない場合などがあるが,それ以外は同一の病態ととらえるべきである。

▶問題点

救急診療をはじめとするプライマリケアの現場でしばしば過換気症候群という診断が下されるが,その最大の問題点は,パニック障害の長期経過を念頭に置いた治療計画を立てずに,ペーパーバッグ法や抗不安薬の頓用という場当たり的な対応に終始することである。そのような対応では,また発作を起こすのではないかという予期不安が強まり,乗り物に乗れなくなったり,人混みでの発作を恐れて外出できなくなるような広場恐怖症状を呈するに至り,社会機能の低下がみられることが稀ではない。そうした事態を避けるためにも,早期の適切な診断と治療が重要である。

▶治療

パニック障害の治療としては,適切な心理教育を行った上で,SSRIによる薬物治療や認知行動療法が行われる。

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