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(3)統合失調症【第2章 用語解説】[特集:向精神薬 総まとめ]

No.4709 (2014年07月26日発行) P.78

古城慶子 (東京女子医科大学精神医学教室臨床准教授)

登録日: 2016-09-01

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▶疾病概念

身体的病因がいまだ知られていない内因性精神病の間には,歴史的慣習としての統合失調症型と躁うつ病型との鑑別類型学があるだけで,疾病単位(疾病学)の意味での鑑別診断学は存在しない。
統合失調症という類型(病像あるいは状態像)を貫いている諸症状連関の意味(精神病理学)は,急性可逆性(相期性,再燃性)あるいは慢性持続性の「自我意識障害」の自律化である。ここで言う広義の「意識」とは,自分が自分であることがわかる能力,省察能力,概念的思考の能力,つまり「自我(私)の意識」にほかならない。それに対して身体医学でいう「意識障害」は狭義の「覚醒障害(意識混濁)」の意味である。
これに反して,自我意識だけが障害されて覚醒は清明な統合失調症というものが確実にある。意識混濁と自我意識障害とを区別するには,一般診療で支離滅裂で夢のような話題に遭遇した時,この人の意識は清明か,と関心を持つことが出発点となる。時間と場所の見当識障害(たとえば脳病変症候群としてのせん妄)があれば,器質因(特定病名)の探索が不可欠である。

▶「自我意識」の障害

統合失調症の症状学では,もともとあった能力(自我意識)の喪失の直接的現れ(陰性症状)と,保持されている自我機能の所産(陽性症状)とが区別される。陰性症状の1つは主観的には「何が何だか訳がわからない」と表現され,客観的には認知障害の程度(注意集中,記銘記憶の障害,錯覚,論理錯誤)で評価される。もう1つの陰性症状は主観的には「自分が自分ではない」と表現され,客観的には人格意識の障害の程度(主体性,現実見当識,自己実現の障害)で評価される。
どのように訳がわからず,自分が自分でなくなっているのかの言明である陽性症状(妄想,幻覚,夢幻症)には,解釈性(妄想知覚が中心症状),幻覚性(言語性幻聴,被影響体験),空想性(妄想着想,空想作話)の妄想系列1)がある。

▶精神病理学的類型診断

脳病変症候群が否定されて,以上述べてきた3つの妄想系列があれば,歴史的慣習としての統合失調症型という呼称に該当する。睡眠短縮,睡眠喪失,緊張興奮,誇大性を伴う急性期(薬物療法の第一の適応)と,それを伴わない慢性期とが区別される。


●文献
1) 古城慶子:妄想の臨床. 鹿島晴雄, 他編. 新興医学出版社, 2013, p69-85.

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