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(7)診療こぼれ話─OSASと不眠の関係[特集:眠れない患者に対応する]

No.4731 (2014年12月27日発行) P.83

山城義広 (嬉野が丘サマリヤ人病院内科)

登録日: 2016-09-01

最終更新日: 2017-04-17

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  • 1. 眠れないOSAS患者

    閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)は日中の過度の眠気を生じる代表的な疾患のひとつで,愁訴も眠気が主であると認識されている。眠気はもちろん重要な症状であり,十分な睡眠時間をとっていても眠気が持続し,仕事中,重要な会議中などに眠りに落ちてしまう。運転や危険な仕事中に寝てしまうと重大な事故が起こる可能性もある。逆に臨床上,不眠を主に訴えて来院する患者で,OSASを最初に疑うことはほとんどないのが事実である。ただし,眠気だけで来院するOSAS患者は少ない。家人からいびきや夜間の無呼吸を指摘されて来院することが多い。本人にはいびきや無呼吸の自覚はなく,眠気は仕事のため,ストレス,睡眠不足によるものであり,病気によるとは思っていない。治療をして初めて,自分の眠気が病的であったと気づくことも多い。

    2. OSASと不眠症状

    OSASの症状は日中の眠気が主であるが,不眠症状の訴えは意外に多い。定義によって異なるため様々であるが,OSAS患者の39%1),50.8%2)で不眠症状の併存が認められ,そのうち,入眠困難が33.4%,睡眠維持困難が38.8%,早朝覚醒が31.4%であったと報告されている3)。性差では男性の5%,女性の17%ではやや女性に多い4)
    不眠を生じる理由は,無呼吸による覚醒を繰り返すため,睡眠維持障害が含まれていると思われる。また,OSASの有病率も不眠の有病率も高く,両者の併存も多いと推察され,もともと慢性不眠症の患者が中年以降にOSASを発症することも考えられる。
    以前から睡眠導入薬を使用している場合は,OSASと不眠の併存を考慮しなければならない。OSASでも重症になると不眠の訴えは少なくなる。夜間の覚醒反応は多いが,完全覚醒までには至らず,長年の分断睡眠のために常に眠い状態であり,入眠困難になることは少なくなる。したがって,不眠の訴えは軽症から中等症に多いと考えられている。
    OSASを扱っている専門施設では,診療する患者群でOSASの比率が高くなり,眠気を訴える人数は多いが,不眠を訴える患者は相対的に少なくなる。診療側でも眠気を主とした問診を行っているのが現状である。不眠を訴えても,OSASでは苦しくて目が覚めることがあり,そのためと考えてしまうことも多い。OSASに対してCPAP治療を施行すると,通常は苦しくて目が覚めることは消失する。効果的な治療を行っても入眠障害,中途覚醒が持続し,経過観察中の問題となることもある。

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