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(2)患者に「眠れない」と 相談されたら[特集:眠れない患者に対応する]

No.4731 (2014年12月27日発行) P.26

登録日: 2016-09-01

最終更新日: 2017-04-14

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  • 睡眠障害の訴えに対して,実地医家で,まずできうる診断の手順などを記載した。

    多くは問診やアンケート,睡眠日誌から判断できる(巻末などの問診票などを利用)。

    専門的な診断が必要な場合,専門施設への紹介タイミングなども記載したので,参考にして頂きたい。

    1. まず最初に確認すること

    患者に「眠れない」と相談されたら,まず実地医家の先生には,症状がいつ頃から始まったのか,また,日中の日常生活に支障があるかを押さえて頂きたい。1カ月以上持続し,生活に支障をきたすのであれば治療対象と考え,引き金になった誘因や不眠の原因となる疾患の検索,不眠の型(入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒など)を念頭に置き,治療開始となる。3剤以上の治療薬が必要になるようであれば,専門家に紹介,依頼するほうがよいかと思われる。

    2. 睡眠障害の分類と診断の手順

    『睡眠障害国際分類』の第3版1)(International Classification of Sleep Disorders, 3rd edition)が2014年3月に刊行された。その中では,様々な睡眠に関わる疾患が分類されており,大別すると,不眠症,睡眠呼吸障害,過眠症,概日リズム睡眠─覚醒障害,睡眠随伴症,睡眠運動障害などがある。
    これらを判別するには,厚生労働省精神・神経疾患委託研究費「睡眠障害医療における政策医療ネットワーク構築のための医療機関連携ガイドライン作成に関する研究」2)の睡眠障害スクリーニングフローチャート(図1)3)が有用である。


    実際には,図1にしたがって不眠または過眠などの原因となる疾患を探り,治療にあたることになる。
    具体的には,以下のような訴えとなる睡眠障害がどのようなものなのかを聞き出す。
    ・睡眠の量と質
    ・寝付きが悪い(入眠障害)
    ・途中で目が覚める(中途覚醒)
    ・朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)
    ・睡眠をとっても熟眠感が得られない(熟眠障害)
    ・朝覚醒しにくい(覚醒困難)
    ・起きていなければならないのに居眠りをしてしまう(過眠)
    ・睡眠・覚醒パターンが学校・就業などのスケジュールと合わない
    ・睡眠に伴う異常現象の有無
    ・いびき・呼吸停止
    ・下肢・上肢の異常感覚・不随意運動
    ・異常行動
    ・ねぼけ など
    睡眠に関する問題の発症時期,きっかけの有無,経過,頻度,症状の内容などを確認し,何が問題になっているかを明らかにする。ただし,睡眠中のことであり,本人が把握できていないこともあるので,ベッドパートナーからの情報も重要である。
    また,既往歴,内服薬服用状況,嗜好品などの確認が必要で,場合によってはこれらの修正により,改善することがある。
    具体的な問診票の例を表1 4)に示す。


    睡眠障害に関する質問紙票としては,ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index:PSQI)(101ページの表参照),アテネ不眠尺度(Athens Insomnia Scale:AIS)(106ページの表参照),入眠時認知活動尺度(Pre-sleep Cognitive Activity Scale:PCAS)(107ページの表参照)がある。当院では主にPSQIやPCASを用いている。
    不眠に特化した重症度の質問としては日本語版不眠重症度質問票(Insomnia Severity Index Japanese version:ISI-J)もあり,不眠の改善の程度などを比較したい場合に用いる。
    睡眠障害の症状は,日常生活の中でのスケジュールなどにより影響を受ける。このため,睡眠日誌を(少なくとも2週間以上)記入して頂くと,不眠,過眠,概日リズム障害,睡眠不足などの診断に役立てることができる。
    睡眠日誌の記入例を図2に示す。

    残り3,555文字あります

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