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思春期・青年期のCKD患者は誰が診るべきか? 【移行医療では,高度で良質な医療を継続しつつ自立を促すことが目標】

No.4816 (2016年08月13日発行) P.48

岡田浩一 (埼玉医科大学腎臓内科教授)

登録日: 2016-08-13

最終更新日: 2016-10-30

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小児科と内科の担当する患者世代の境目は16歳であるが,慢性疾患に関しては16歳を超えても小児科医が継続診療している場合が少なくない。
小児科から内科への転科は就学や就職に際して自立を促すことになり,また,成人病や妊娠・出産の問題にも適切に対処が可能となることから推奨される。小児慢性腎臓病(CKD)に関しても,2014年に厚労科研「難治性疾患等政策研究事業」(丸山班)により実態調査が行われた(文献1)。それによると,小児科から内科への転科は5年間で735例であり,その35%は25歳を過ぎてからであった。一方,転科せずに小児科で診ている症例は1631例と多く,その43%は25歳を過ぎていた。
転科しない理由としては,患者・家族の希望が43%,小児科医の考え・不決断が33%,腎臓内科医の不在が14%であった。この時期の医療は移行医療と呼ばれ,これは単なる転科のみではなく,その前後における思春期・青年期特有の社会的・情緒的・行動的な問題への対処を含んだ概念である(文献2)。これは高度で良質な医療を継続しつつ,自立を促すプログラムとも言える。
移行医療の概念の普及は十分ではなく,「小児慢性腎臓病患者における移行医療についての提言」(文献2)の公開に続いて,現在「思春期・青年期の患者のためのCKD診療ガイド(仮)」が準備されている。これらのツールによって,わが国のCKD診療における移行医療が推進されることを期待する。

【文献】


1) Hattori M, et al:Clin Exp Nephrol. 2016 Jan 19. [Epub ahead of print]
2) 本田雅敬, 他:日腎会誌. 2015;57(5):789-803.

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