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心Fabry病:根本治療可能な心筋症 【早期診断が重要で,早期から酵素補充療法を行うことで病状の進行が抑えられる】

No.4807 (2016年06月11日発行) P.51

山川裕之 (慶應義塾大学循環器内科)

福田恵一 (慶應義塾大学循環器内科教授)

登録日: 2016-06-11

最終更新日: 2016-10-26

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Fabry病はX染色体の劣性遺伝形式をとる先天性スフィンゴ糖脂質代謝異常症であり,厚生労働省の難病(特定疾患)に指定されている。通常,全身型Fabry病の発生頻度は,西洋男性4万~11万人に1人と言われている。一方,亜型である心Fabry病は左室肥大(心肥大)を有する患者の中で0.1~10%程度であり(文献1),その頻度は全身型Fabry病の頻度より高いとも言われている。
心Fabry病では,本来不要なスフィンゴ糖脂質が心筋細胞に蓄積することで様々な病態を呈する。心筋細胞が膨脹することで,心肥大を起こし左室拡張能障害が進行する。最後には心筋細胞が死滅し,収縮障害や致死的不整脈を誘発する。また,冠動脈内皮障害を起こし,急性冠症候群を起こす誘因となる。一連の心臓病変は進行性で,患者寿命は通常の平均寿命よりも10歳程度短い。
心肥大(二次性心筋症を含む)の中で心Fabry病の診断がつけば,酵素補充療法(enzyme replacement therapy)という根本的な治療が,日本では2004年より可能である。酵素補充療法は2週間に1回の静脈内点滴が必要であるが,心Fabry病との早期診断を行い,早期治療することで病状の進行が抑えられることが明確になってきた(文献2)ことから,早期診断・治療は非常に重要である。
当大学病院循環器内科でも,心肥大の患者から心Fabry病患者を診断し,できるだけ早期に酵素補充療法を行うことが可能である。

【文献】


1) Elliott P, et al:Heart. 2011;97(23):1957-60.
2) Beer M, et al:Am J Cardiol. 2006;97(10):1515-8.

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