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低体温療法から体温管理療法へ 【目標体温32~36℃が推奨されたが,エビデンスの集積が必要】

No.4779 (2015年11月28日発行) P.52

金田浩太郎 (山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター講師)

鶴田良介 (山口大学大学院医学系研究科 救急・総合診療医学分野教授)

登録日: 2015-11-28

最終更新日: 2018-11-27

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低体温療法とは,治療を目的として患者を低体温に管理するもので1950年頃より行われているが,低体温療法が有効であるというエビデンスは,長い間得られなかった。
2002年に心室細動による院外心停止患者を対象とした2つのランダム化比較試験(RCT)によって,膀胱温を32~34℃に24時間維持するプロトコルと,深部体温を33℃に12時間維持するプロトコルで低体温療法の有効性が示され,2005年にはガイドラインでも,心停止患者に対する目標体温を32~34℃とする低体温療法が推奨された。
しかし,これらの試験に限らず,これまでに行われた研究では目標体温,冷却方法,維持期間,復温速度などの管理法が様々であって,評価・比較が困難という問題があった。このような背景から2009年に国際会議が行われ,それまで使用されていた低体温療法(therapeutic hypothermia)という言葉を体温管理療法(targeted temperature management:TTM)に置き換えること,また導入,維持,復温について記載すること,などが推奨された。
その後,2013年に目標体温33℃のTTMと,36℃のTTMでは予後に差がないことがRCTで示され,再びTTMのエビデンスは覆された。2015年中に発表されたガイドラインでは,目標体温32~36℃のTTMが推奨されたが,いまだに最適なTTMプロトコルは明らかでなく,エビデンスの集積が望まれるところである。

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