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認知行動療法

No.4712 (2014年08月16日発行) P.55

大森哲郎 (徳島大学精神科神経科教授)

登録日: 2014-08-16

最終更新日: 2016-10-26

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一般に,精神療法は治療者と患者の言語的および非言語的な対人交流を基盤とするものであり,広義の精神療法的な効果はすべての医療行為に付随していると言ってよい。説明と同意を伴う医療行為は,患者の生理的な痛みだけでなく心理的な不安をも軽減する作用を,意図せずとも持っている。
精神科領域にはこのような非特異的な精神療法だけでなく,いくつかの体系的な精神療法の技法が導入されている。その中で,最近最も注目され評価も高いものが認知行動療法である。人間の情緒が認知のあり方によって影響を受けることから,認知のあり方に働きかけて感情や情動の改善を図る点にこの治療法の特徴がある。
認知を介在して行動に働きかけることもあることから,認知行動療法と呼ばれることが多い。たとえば,ちょっとした仕事のミスから絶望的な気分に陥り,「自分はいつもヘマばかりでダメな人間だ」と思い込みやすい患者に対し,「いつもミスしているわけではないし,取り返しのつかないミスではない」,と合理的に考え直す練習を繰り返すことで,認知の修正を図っていく。
精神分析や森田療法などの従来の精神療法と比べて,比較的短い治療期間が想定されていること,手順がある程度マニュアル化されていること,深層心理や性格傾向ではなく症状や現実的問題の軽減を目標としていることなどが,この治療法の特徴である。これらの特徴は,通常の診察室で行われる症候学的診断や薬物療法と両立しやすいというメリットにもつながっており,この治療法が普及する背景となっている。

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