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降圧薬の減量および中止

No.4697 (2014年05月03日発行) P.62

河野雄平 (国立循環器病研究センター高血圧・腎臓科部長)

登録日: 2014-05-03

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

「降圧薬は一度飲みはじめると,一生飲み続けなければならないのでしょうか?」と降圧薬開始時によく質問されます。長期間服用するものなので,血圧が正常レベルまで低下して,ある程度経過したとき,降圧薬の用量を減らしたり,1種類またはすべて中止しても安全かどうか,患者も医師も知りたいと思います(血圧が再上昇してくれば増量・再開することを前提に)。降圧薬の減量および中止について,国立循環器病研究センター・河野雄平先生に。
【質問】
芦田映直:朝日生命成人病研究所循環器科顧問

【A】

薬物療法中で血圧がコントロールされている高血圧患者においては,降圧薬を中止すれば多くの場合は血圧が上昇するため,降圧治療は継続することが原則です。しかし,一部の患者さんは降圧薬の中止が可能で,降圧薬の減量はかなりの患者さんにおいて試みることができるでしょう。ただし,血圧が極端に低い場合を除いては,患者さんの判断で薬を勝手に減量,中止しないよう指導しておく必要があります。また,降圧薬を減量,中止した場合には,家庭血圧を含めて経過観察を行い,血圧の再上昇に注意を要します。
降圧薬の減量は,血圧,特に家庭血圧が十分に低ければ積極的に試みることが勧められます。特に,立ちくらみやめまい,脱力感などの症状があり,血圧低値との関係が認められれば,速やかな減量を要します。
また,季節変動で夏季に血圧が下がれば,降圧薬も減らすほうがよいでしょう。標準用量の単剤治療の場合は半量に減量し,併用治療の場合は積極的適応の薬剤以外のものを減量あるいは中止し,積極的適応の薬剤は継続あるいは減量とします。季節変動への対処としては,利尿薬が使用されていれば減量あるいは中止を考慮すべきでしょう。
さらに,生活習慣の修正は薬物治療中の患者においても重要です。改善できれば降圧薬の減量が可能になることを含めて指導して頂きたいと思います。
降圧薬の中止については,以下の条件をクリアする必要があり,より慎重な判断を要します。
まず,心臓や腎臓の合併症がないことが前提となります。降圧薬は心疾患や腎疾患の治療のために用いることがしばしばあり,その場合は血圧が低くても薬を継続すべきです。心血管や腎の合併症がなく,少量の降圧薬で血圧,特に家庭血圧が十分に低ければ,降圧薬の中止を試みてよいでしょう。夏季に血圧が下がった場合や,生活習慣の修正ができた場合も,降圧薬の中止が可能です。
十分に低い血圧値は症例により異なりますが,私は血圧(平均値)が目標血圧値より10/5mmHg以上低い場合に,降圧薬の減量あるいは中止を考慮しています。使用されている降圧薬が最小量(標準用量の半量)の場合は中止してよく,標準用量の場合は減量した後に中止を考慮すべきでしょう。

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