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発作性・持続性・永続性心房細動の分類定義とは?

No.4804 (2016年05月21日発行) P.61

村田広茂 (日本医科大学多摩永山病院内科・循環器内科)

新 博次 (日本医科大学名誉教授/日本医科大学多摩永山病院病院長)

登録日: 2016-05-21

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

心房細動の分類で以下の定義を教えて下さい。また,各分類で塞栓の頻度は変わらないのでしょうか。
・paroxysmal
・persistent
・permanent (東京都 F)

【A】

心房細動は,慢性進行性の疾患としてとらえられており,発作頻度と持続時間の増大によって最終的に,常時心房細動の状態へと進行していくと考えられています。現在,最も頻用され,かつ簡便で臨床医に有益である心房細動の病型分類は,2006年より欧米のガイドラインに採用されている分類方法です(文献1)。この分類では,心房細動の持続時間と除細動可能性の2点によって,発作性(paroxysmal),持続性(persistent),永続性(permanent)に区別しています。
まず,持続時間によって,発作性を「発症後7日以内に洞調律に復するもの」,持続性を「7日を超えて心房細動が持続するもの」と定義しています。さらに,「1年以上持続するもの」は,長期持続性(long-standing persistent)と区別しています。一方,永続性とは,電気的あるいは薬理学的に除細動不能の心房細動に対し使用される用語です。以前より多用されていた慢性(chronic)という用語が,長期持続性と永続性に区別されたとも言えます。つまり,近年目覚ましく発展したカテーテルアブレーションと薬物療法により,慢性心房細動と呼ばれていた症例においても,持続性や長期持続性という洞調律の維持が期待できる症例が存在することがわかり,心房細動アブレーション時代の新たな定義づけがなされたわけです。ここで注意しなくてはならないのは,この分類の利用価値は,心房細動に対してのリズムコントロールにおける治療方針決定にあり,塞栓リスクの評価にはないということです。
筆者らは,実臨床において病型分類の進行,つまり発作の持続時間延長によって塞栓症リスクが上昇するように感じていますし,ある一定の心房細動持続が血栓形成に重要であることも事実です。しかし,これまでに施行された大規模臨床研究において心房細動の塞栓リスクと強い相関を示したのは,心不全,高血圧症,年齢,糖尿病,脳梗塞(または一過性脳虚血発作)の既往,つまりCHADS2スコアで示されるリスク因子でした。
一方で,これら加齢や高血圧などのリスク因子は,心房細動の病型進行のリスク因子でもあります。つまり,発作性よりも持続性,持続性よりも永続性心房細動患者のほうが塞栓の頻度が増加するのは事実ですが,CHADS2スコアなどを調節した上で解析すると,発作性と永続性との塞栓リスクの差が認められなくなるということです(文献2)(文献3)。ただし,この結果をふまえて,永続性は,発作性と同等の低リスクであると考えるのではなく,発作性心房細動患者であっても塞栓リスクの高い症例は,抗凝固療法の適応を検討すべきという解釈が適当であると考えます。

【文献】


1) Fuster V, et al:Circulation. 2006;114(7):e257-354.
2) Hohnloser SH, et al:J Am Coll Cardiol. 2007;50(22):2156-61.
3) Inoue H, et al:Circ J. 2014;78(10):2388-93.

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