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カルニチンの抗AGEs作用とは?

No.4801 (2016年04月30日発行) P.68

古市泰郎 (首都大学東京人間健康科学研究科 運動分子生物学研究室)

藤井宣晴 (首都大学東京人間健康科学研究科 運動分子生物学研究室教授)

登録日: 2016-04-30

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

抗AGEs作用があると言われるカルニチンについて教えて下さい。 (東京都 S)

【A】

糖質は生命の重要なエネルギー源ですが,生体の蛋白質と非酵素的に反応して,その活性や物性を大きく変化させる性質も持ち合わせています。この蛋白質の糖化反応(glycation)は,グルコースなどの還元糖のカルボニル基が蛋白質のアミノ基と反応してアマドリ化合物が生成される前期反応と,酸化や脱水などの不可逆的な後期反応にわけられます。最終的に生成した物質は総称して終末糖化産物(advanced glycation end products:AGEs)と呼ばれ,糖尿病を代表とする様々な疾患の発症や進展に深く関わるとされています。AGEsを除去するために特異的な結合アプタマー治療薬が開発されているものの,蓄積したAGEsを減らすことは難しいので,AGEsの生成を予防する必要があります。
一方,カルニチンは長鎖脂肪酸のミトコンドリア膜輸送に働く,脂質代謝に必須のビタミン様物質です。近年ではカルニチンは細胞内に蓄積した過剰な糖や脂質を排出する機能を持つことが明らかとなり,糖代謝における重要性が注目されています(文献1)。
カルニチンの継続的な摂取は,AGEsの蓄積を抑制することが報告されています。ラットを用いた試験では,カルニチンの投与によって糖質摂取による血糖上昇が軽減されるとともにAGEsの蓄積も抑制されていました。この機序としては,カルニチンが筋肉での糖の処理能力を促進させた可能性が挙げられます。また,カルニチンはウシ血清アルブミンの糖化を抑制したというin vitroの試験報告があることから,カルニチンがAGEsの生成を直接阻害する効果を持つ可能性も考えられます(文献2)。カルニチン欠乏を起こしやすい血液透析患者に900mg/日のカルニチンを6カ月経口摂取させた試験では,カルニチンの補充によってAGEsの蓄積が減少していました(文献3)。通常,カルニチンは必要量を体内で産生できますが,遺伝的理由や医学的理由によって欠乏している場合はそれを補給する必要があります。

【文献】


1) Furuichi Y, et al:J Phys Fitness Sports Med. 2014;3(2):163-8.
2) Rajasekar P, et al:Acta Diabetol. 2007;44(2):83-90.
3) Fukami K, et al:Rejuvenation Res. 2013;16(6):460-6.

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