株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

メルケル細胞の感覚における分子機能メカニズム【動的な刺激・静的な刺激に敏感に応答でき,わずかな表面の違いも感知】

No.4874 (2017年09月23日発行) P.52

成澤 寛 (佐賀大学皮膚科教授)

登録日: 2017-09-24

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

触覚は,五感の中で最も基礎的な感覚であるにもかかわらず,最も解明が遅れていた。神経終末と同様に,機械刺激を検知して感覚神経に伝えると予測されているメルケル細胞の機能の研究は,近年著しい進歩を遂げている。

メルケル細胞は,表皮内においてメルケルと神経終末とが隣接するメルケル-神経複合体を形成することにより,触覚受容器としての機能が予測されていた。しかし,メルケル細胞と神経の終末とのシグナル伝達の存在は予測されているものの,機械受容を担うチャネルについては明らかにされてこなかった。

2010年,piezoチャネルが発見され,巨大なイオンチャネルで,物理的な力により蛋白質の立体構造が変わることでチャネルが開き細胞内外のイオン交換が起こると考えられている。メルケル細胞においてもpiezo 2を介して機械刺激を細胞内の電位変化につないでいることが明らかにされた。

さらに,遺伝子改変マウスによる機械刺激ではなく,光刺激を用いた実験においては,光刺激で惹起されたメルケル細胞から生じた興奮を伝えて感覚神経の応答を引き起こした。この結果によって,メルケル細胞が触覚センサであり,感覚神経に情報を伝える能力があることが証明された。

刺激を加えた瞬間の動的な刺激を見逃さず,敏感に応答するためにメルケル細胞が必要なことが明らかになり,押されている間の静的な刺激にも継続して応答し,順応を遅らせていることも判明した。メルケル細胞が機能することで,やさしく触れた刺激にも敏感に応答でき,わずかな表面の違いも感知できるのである。

【解説】

成澤 寛 佐賀大学皮膚科教授

関連記事・論文

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top