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ビタミンB12欠乏症を早期に鑑別するには?

No.4783 (2015年12月26日発行) P.63

佐々木陽典 (東邦大学医学部総合診療・救急医学講座)

瓜田純久 (東邦大学医学部総合診療・救急医学講座教授)

登録日: 2015-12-26

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

ビタミンB12欠乏症は早期発見・治療が必要となりますが,発症時に特徴的な所見をご教示下さい。神経症状と血液検査上の貧血とでは,どちらが先に出現しますか。 (和歌山県 T)

【A】

ビタミンB12は十分量が体内に貯蔵可能であることから,体内摂取が不足してから数年をかけて欠乏症状の発現に至ると考えられるため,大半の症例で正確な発症時期の推定は困難と思われます。
ビタミンB12 欠乏症の症候は,巨赤芽球性貧血と亜急性連合性脊髄変性症が代表的ですが,貧血の重症度と神経症状に相関はないとされています。本症患者のうち,貧血を呈する患者は29~72%,MCV(平均赤血球容積)高値例40~80%と報告によって差があり,特に高齢者では貧血を呈さない症例が多いとされていることから,貧血やMCV上昇を伴わない症例でも本症は否定できません(文献1)。
貧血に伴う諸症状のほかハンター舌炎(Hunter glossitis)による舌痛,悪心,食欲不振,便通異常などの消化器症状,四肢のしびれや感覚障害によるふらつきや歩行障害など,多様な症状を呈します。特に高齢者においては,本症が認知機能障害をきたすことがあり,treatable dementia(治療可能な認知症)の鑑別診断として重要です。
診断としては,(1)欠乏をきたす素因の検討,(2)特徴的な症状や診察所見の確認,(3)検査結果の適切な解釈,の順に行うことが有用と思われます。
欠乏をきたす素因として,胃切除,萎縮性胃炎,自己免疫性疾患,極端な菜食主義,妊娠,回盲部病変などが挙げられます。これらの確認に加え,高齢者の10~24%に本症が認められるとの報告もあり,高齢者が本症をきたしやすいことを知っておくことも重要と思われます(文献2)。PPI(プロトンポンプ阻害薬),H2 受容体遮断薬,メトホルミンなどの薬剤による吸収阻害も本症の原因とされます。高齢者で本症が多くみられる原因として,萎縮性胃炎の頻度増加に加えて制酸薬の長期服用との関連も指摘されています。
診察においては,ハンター舌炎を示唆する牛肉様舌,白髪などの特徴的所見を認めれば手がかりとなります。神経学的所見に関しては後索障害を示唆する下肢の深部感覚低下やロンベルグ徴候(Romberg sign)が早期診断に有用であり,高齢者においては認知症の鑑別診断として本症を念頭に置くことも必要でしょう。
本症を疑った際には,血清ビタミンB12値を測定して診断を進めることになりますが,解釈には注意が必要です。一般的に,200pg/mL未満の場合には欠乏と判断され,300~400pg/mL以上であれば本症はほぼ除外できるとされています(文献3) (文献4) 。一方で,200~300pg/mLの場合には欠乏症の判断は容易ではなく,診断のためにさらに血清ホモシステイン濃度,血清メチルマロン酸の測定を行うこととされています。
ただし,現状では検査可能な施設が限られ,実臨床における診断は必ずしも容易ではないという問題点があります。筆者らの施設を含め,呼気検査に関する研究なども進められており,今後の診断率の向上が望まれるところです(文献5)。

【文献】


1) Pruthi RK, et al:Mayo Clin Proc. 1994;69(2):144-50.
2) Oh RC, et al:Am Fam Physician. 2003;67(5):979-86.
3) Lindenbaum J, et al:Am J Hematol. 1990;34(2):99-107.
4) Matchar DB, et al:Am J Med Sci. 1994;308(5):276-83.
5) Wagner DA, et al:J Breath Res. 2011;5(4):046001.

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