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歯肉増殖の副作用が少ないCa拮抗薬はありますか?

No.4772 (2015年10月10日発行) P.59

松本裕子 (日本大学松戸歯学部薬理学講座講師)

登録日: 2015-10-10

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

高血圧で治療中の患者で,歯科医師より「歯肉の増殖があるためCa拮抗薬を中止できないか」と照会を受けることがあります。他薬への変更で血圧がコントロールできればよいのですが,必ずしもうまくいくとは限りません。Ca拮抗薬の中で歯肉の増殖を生じやすいものと,そうでないものはありますか。違いを示したデータなどもあればご教示下さい。 (東京都 K)

【A】

1984年にCa拮抗薬であるニフェジピンの副作用として歯肉増殖症が最初に報告されて以来,Ca拮抗薬による歯肉増殖の症例が多数報告されています。基本的にどのCa拮抗薬においても歯肉増殖が発症する可能性はありますが,ニフェジピンの発症率が最も高くなっています。
英国におけるCa拮抗薬による歯肉増殖の発症率に関する調査ではニフェジピンの発症率は6.3%であり,その発症率は男性が女性の約3倍であったと報告されています(文献1)。
同様に,筆者らの施設においても,歯科治療を受けたCa拮抗薬の服用者1533名を対象として,17種類のCa拮抗薬による歯肉増殖症の発生頻度を調査したところ,ニフェジピンの発症率が7.7%と最も高く,ついで,ジルチアゼム4.0%,マニジピン1.8%,アムロジピン1.3%,ニソルジピン1.1%,およびニカルジピン0.5%に認められました。ほかのCa拮抗薬では歯肉増殖が認められなかったことから,発症はきわめて稀であると思われます(文献2,3)。
Ca拮抗薬の中でなぜ発症率が異なるかは不明ですが,ニフェジピンでは歯肉溝滲出液中の濃度が高値を示すことが報告されています(文献4)。歯肉増殖の程度は,歯肉溝滲出液中の薬物濃度,薬物の生物学的利用能,および薬物の蛋白結合率と相関していることから,このことがニフェジピンの高い発症率を示す一因であると考えられます。
薬物性歯肉増殖症の発症や進展にプラークが関与していることが示唆されており,プラークはきわめて重要な補助因子であると考えられています。歯肉増殖症が重篤でない場合,口腔清掃,スケーリング,およびルートプレーニング(歯根面の滑沢化)などの歯周基本治療によって症状は改善します。また,ニフェジピンから同じCa拮抗薬であるアゼルニジピンへ変更することによって歯肉増殖が改善した症例が報告されています(文献5)。したがって,Ca拮抗薬以外の降圧薬への変更が難しい症例に対しては,歯肉増殖の発症率が低いほかのCa拮抗薬への変更とプラークコントロールを主体とした炎症のコントロールも視野に入れて対応することが重要と思われます。

【文献】


1) Ellis JS, et al:J Periodontol. 1999;70(1):63-7.
2) 小野眞紀子, 他:歯薬療法. 2008;27(2):79-85.
3) Ono M, et al:Int J Oral-Med Sci. 2010;9(2):96-100.
4) Seymour RA, et al:J Clin Periodontol. 2000;27(4):217-23.
5) 亀井英彦, 他:日歯周病会誌. 2014;56(春季特別号):131.

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