株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

ストレートバック症候群(SBS)の鑑別

No.4759 (2015年07月11日発行) P.62

徳田安春 (地域医療機能推進機構(JCHO)本部顧問)

登録日: 2015-07-11

最終更新日: 2018-11-27

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

43歳,男性,船員。3週間前からときどき左前胸部に重く締めつけられる感じと息苦しさがあり,発作は数時間~1日続きます。一番強い発作は船上での就寝中で,寝返りを打ったり座ったりしましたが,2~3時間続いた後,しだいに消失。受診当日は起床時から息苦しさが続きました。症状は労作,体位と無関係ですが,最近,労作時の息苦しさを感じやすくなったとのこと。
受診時(軽い症状あり)の血圧136/82mmHg,心拍数66/分,SpO2 99%,体温36.2℃,心雑音なし,呼吸音正常。喫煙18~24歳で1日1~2箱,飲酒歴なし。血算正常,生化学検査はLDL-C 188
mg/dL以外は正常,Dダイマー 1.0μg/mL。心電図:心拍数54/分,洞調律。胸部X線に著変ないが,ストレートバック症候群(straight back syndrome:SBS)の診断基準(T4-12のラインからT8までの距離が6mmで1.2cm未満)を満たしています。胸骨-T8/左右径は0.42で基準を満たしていません。
(1) SBSの可能性はあるでしょうか(若い頃,症状はなかったようです)。
(2) 鑑別すべき疾患や必要な診察,検査について。
地域医療機能推進機構・徳田安春先生にご解説をお願いしたいと思います。 (千葉県 K)

【A】

[1]ストレートバック症候群(SBS)の特徴
SBSの可能性はあるとは思いますが,ほかの疾患の除外が必要になると思います。まず,SBSの特徴は以下の通りです。
(1)大多数のSBSは無症状
(2)動悸や胸痛などの症状はあっても軽度のことが多い。典型的には慢性の症状
(3)体動時や胸郭の圧迫で胸壁痛をきたすことがある
(4)僧房弁逸脱症候群や先天性大動脈二尖弁などの合併を認めることがある
(5)胸郭の前後径が短縮するために右室流出路が外から圧迫され,右室の機能的駆出性雑音が聴かれることがある。ただし,右心不全など血行動態に影響を及ぼすことは少ない
一方,本例の特徴は以下と思われます。
(1)症状が「3週間前から」と比較的に急性の発症
(2)症状が比較的強い
(3)症状は胸部の不快感に加えて呼吸困難感が強い
以上より,典型的なSBSではないようですので,ほかの疾患の除外も必要かと思います。
ほかの疾患の可能性が低く,胸壁痛や僧房弁逸脱症候群などがあればSBSの可能性は高まると思います。
[2]鑑別すべき疾患
異型狭心症,発作性不整脈,肺塞栓症,縦隔疾患,食道疾患,抑うつなどに関連する身体表現性障害などが挙げられます。
異型狭心症や発作性不整脈の除外には,ホルター心電図検査が勧められます。本例のDダイマー値は正常ですが,原因が明らかでない呼吸困難があるため,肺塞栓症の除外には胸部造影CT検査または肺換気血流シンチグラフィーが勧められます。
縦隔腫瘍などの縦隔疾患の除外には,胸部造影CT検査が勧められます。食後の症状やげっぷなどがあれば胃食道逆流症の可能性があり,食道内視鏡検査が勧められます。また,食道痙攣の除外には食道造影などが勧められます。抑うつ状態の除外には,抑うつ状態のスクリーニング問診を行います。

【参考】

▼ Esser SM, et al:Eur Heart J.2009;30(14):1752.
[http://eurheartj.oxfordjournals.org/content/30/14/11752.long]

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top