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NOAC開始後の除細動

No.4719 (2014年10月04日発行) P.63

是恒之宏 (国立病院機構大阪医療センター臨床研究センター長)

登録日: 2014-10-04

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

心房細動におけるNOAC(novel oral anticoagulant)開始後の除細動について。
日本循環器学会の「心房細動治療(薬物)ガイドライン」では,電気的除細動施行前3週間および施行後4週間のワルファリン投与を推奨するとされているが,薬物による除細動も含めてNOAC使用(経食道エコー未施行)の場合ではどうか。(神奈川県 M)

【A】

結論から言うと,除細動時のNOAC使用のエビデンスは十分に確立されていない。
ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン,いずれの薬剤も,大規模試験中に除細動を行った症例では,除細動後の30日間に生じた虚血性塞栓イベント発症率はワルファリンと差はなかったとする報告がある(文献1~3)。ただし,日常診療で筆者らが経験するものと,下記の点で異なる。
(1)除細動3週間前に投与開始したものではない。
(2)治験に参加する患者はほとんどがアドヒアランス良好である。
(1)に関しては,治験中に必要に応じて行われたものであることから,3週間以上服用していた症例がほとんどであると推察される。したがって,除細動3週間前からの開始で十分であるというエビデンスにはならない。(2)に関しては,さらに重要なポイントであろう。日常臨床では除細動を目的に抗凝固薬を開始する場合,患者は必ずしもその重要性を十分理解していない可能性がある。治験に参加した患者の多くがアドヒアランス良好であり,この点は,報告で得られた患者背景とは大きく異なるであろう。NOACの場合,服薬が遵守されないと速やかに効果が消失してしまうため,3週間の服用中に抗凝固作用が安定して発揮されていない可能性がある。しかし,それを血液検査などで立証する手立てがない。また,ピーク値トラフ値変動の大きい薬剤では,心房内血栓があった場合,3週間で血栓消失が得られるかどうかのエビデンスも,今のところない。
以上のことから,NOAC使用時には,除細動前に可能な限り経食道エコーを実施し,血栓がないことを確認すべきと考える。

【文献】


1) Nagarakanti R, et al:Circulation. 2011;123(2): 131-6.
2) Piccini JP, et al:J Am Coll Cardiol. 2013;61(19): 1998-2006.
3) Flaker G, et al:J Am Coll Cardiol. 2014;63(11): 1082-7.

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