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大血管合併症を見据えた糖尿病治療の実際【早期より低血糖の合併や体重増加に留意して厳格な血糖コントロールを行う】

No.4786 (2016年01月16日発行) P.56

三田智也 (順天堂大学医学部糖尿病・内分泌内科准教授)

登録日: 2016-01-16

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

近年の糖尿病治療は急激な進歩を遂げており,合併症に悩む多くの患者の福音となっているものと推察します。糖尿病大血管合併症の進展阻止においては,血糖コントロールの重要性を示す報告が数多く存在しますが,一方で重症低血糖が心血管疾患発症リスクを上昇させるという報告もあることから,最近では糖尿病患者の血糖管理は「いかに下げるか」から「どのように下げるか」という概念に移行しているとも聞きます。糖尿病大血管合併症をより阻止しうる糖尿病治療薬の選択法について,順天堂大学・三田智也先生のご教示をお願いします。
【質問者】
松村 剛:熊本大学医学部附属病院 糖尿病・代謝・内分泌内科講師

【A】

近年,ACCORD(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes), ADVANCE(Action in Diabetes and Vascular Disease:Preterax and Diamicron MR Controlled Evaluation)やVADT(Veterans Affairs Diabetes Trial)などの大規模臨床試験では,厳格な血糖コントロールが2型糖尿病患者の心血管イベントを抑制することは証明されませんでした。一方ACCORD試験では,通常療法群に比較して強化療法群でむしろ総死亡が有意に増加しました。現在,強化療法群における低血糖の発症の増加や体重の増加が死亡率の増加に関連しているのではないかという議論がなされています。
メトホルミンやピオグリタゾンは2型糖尿病患者の心血管イベントを抑制する可能性が大規模臨床試験で示されていますが,サブ解析あるいは2次エンドポイントの結果であり,その効果は部分的であると考えられます。また,最近行われたDPP-4阻害薬の2型糖尿病心血管イベント発症に対するプラセボとの非劣性試験では,DPP-4阻害薬が心血管イベントを増加させないことが確認され,同時に,低下させることがないことも示されました。したがって,現時点では糖尿病治療薬そのものが大血管障害を抑制することは明らかになっていません。一方で,UKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)で示されたように糖尿病と診断された早期より,長期にわたる良好な血糖コントロールが2型糖尿病患者の心血管イベント発症を抑制するために重要です。
これらの結果をふまえると,糖尿病大血管合併症を抑制する糖尿病治療としては,早期より低血糖の合併や体重増加に留意しながら,厳格な血糖コントロールを行うことであると考えられます。具体的には,低血糖の合併や体重増加をきたしにくいメトホルミンを第一選択薬として使用することが望ましいと考えられます。やせ型の2型糖尿病患者では,単剤では低血糖の合併や体重増加をきたしにくいDPP-4阻害薬も,今後長期の有効性や安全性が確認されれば,第一選択薬になってくる可能性があります。これらの薬剤でHbA1c 7%未満を達成できない場合には,DPP-4阻害薬,メトホルミン,α-グルコシダーゼ阻害薬,ピオグリタゾンやSGLT-2阻害薬などを年齢,肥満度や合併症の有無により選択していくことになると思います。
特に,メトホルミンは高齢者や心腎機能障害を有する患者では乳酸アシドーシスの合併リスクが増加する可能性があり,注意が必要です。SGLT-2阻害薬も体重減少作用があり,単剤では低血糖を起こす可能性が低く,血圧や脂質代謝にも好影響を与えることから,動脈硬化抑制の観点からは優れていると推測され,今後第二,第三選択薬に位置づけられる可能性はあります。しかし,高齢者では脱水などのリスクもあり,長期の安全性の確立が必須であると思われます。
これらの薬剤を駆使しても血糖コントロールが得られない場合には,低血糖の合併や体重増加に留意しながら,少量のSU薬の追加を考慮します。一方で,糖尿病罹病期間が長い,高齢,既に心血管イベントを起こした患者では,DPP-4阻害薬,メトホルミン,ピオグリタゾン,α-グルコシダーゼ阻害薬,グリニド薬,SU薬などを患者の病態に合わせて選択し,急激に血糖を是正しないことが重要であると考えます。

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