レボドパ製剤での治療導入を原則とする。ただし,おおむね6~8mg/日/体重kgを超えると,ジスキネジアのリスクが生じるため注意する。この場合,二手目・三手目の早期併用も検討する。また,抑うつ気分が強い場合も二手目・三手目の単独または併用が選択肢になる。三手目を選択する場合は,突発的睡眠のリスクに注意する。
一手目 ネオドパストンⓇ100mg配合錠(レボドパ・カルビドパ水和物)1回0.5~1錠1日3回(毎食後),またはマドパーⓇ100mg配合錠(レボドパ・ベンセラジド塩酸塩)1回0.5~1錠1日3回(毎食後)
二手目 エフピーODⓇ2.5mg錠(セレギリン塩酸塩)1回1~4錠1日1〜2回(5mgまでは朝1回,7.5〜10mgは朝・昼2回),またはアジレクトⓇ1mg錠(ラサギリンメシル酸塩)1回1錠1日1回(朝)
三手目 ミラペックスⓇLA錠(プラミペキソール塩酸塩水和物)1回0.375mg 1日1回(朝)より開始,1回1.5~4.5mg 1日1回で維持,またはレキップⓇCR錠(ロピニロール塩酸塩)1回2mg 1日1回(朝)より開始,1回8~16mg 1日1回で維持,またはニュープロⓇパッチ(ロチゴチン)1回2.25mg 1日1回(肩,上腕部,腹部,側腹部,臀部,大腿部のいずれかに貼付)より開始,1回9~36mg 1日1回で維持,またはハルロピⓇテープ(ロピニロール塩酸塩)1回8mg 1日1回(胸部,腹部,側腹部,大腿部,上腕部のいずれかに貼付)より開始,16~64mgで維持
レボドパ製剤を1日3回使用しても薬効が切れる状態(ウェアリング・オフ)となった場合,以下を考慮する。
①レボドパ製剤の服用回数を1日4~8回まで増量:ネオドパストンⓇ100mg配合錠(レボドパ・カルビドパ水和物)1回1~2錠1日4~8回,またはマドパーⓇ100mg配合錠(レボドパ・ベンセラジド塩酸塩)1回1~1.5錠1日4~6回
②MAO-B(モノアミン酸化酵素B)阻害薬を併用:エフピーODⓇ2.5mg錠(セレギリン塩酸塩)1回1~4錠1日1〜2回(5mgまでは朝1回,7.5〜10mgは朝・昼2回),またはアジレクトⓇ1mg錠(ラサギリンメシル酸塩)1回1錠1日1回(朝),またはエクフィナⓇ50mg錠(サフィナミドメシル酸塩)1回1~2錠1日1回(朝)
③COMT(カテコール-O-メチル基転移酵素)阻害薬を併用:オンジェンティスⓇ25mg錠(オピカポン)1回1錠1日1回(就寝前)を併用,またはスタレボⓇ配合錠(レボドパ・カルビドパ水和物・エンタカポン)をレボドパ製剤と置き換える形で導入する。ウェアリング・オフの目立つ時間帯から順次導入する。
④ドパミンアゴニストを併用:ミラペックスⓇLA錠(プラミペキソール塩酸塩水和物)1回0.375mg 1日1回(朝)より開始,1回1.5~4.5mg 1日1回で維持,またはレキップⓇCR錠(ロピニロール塩酸塩)1回2mg 1日1回(朝)より開始,1回8~16mg 1日1回で維持,またはニュープロⓇパッチ(ロチゴチン)1回2.25mg 1日1回(肩,上腕部,腹部,側腹部,臀部,大腿部のいずれかに貼付)より開始,1回9~36mg 1日1回で維持,またはハルロピⓇテープ(ロピニロール塩酸塩)1回8mg 1日1回(胸部,腹部,側腹部,大腿部,上腕部のいずれかに貼付)より開始,16~64mgで維持
⑤デバイス補助療法:内服薬や貼付剤でのコントロールが困難となった場合に考慮する。デュオドーパⓇ配合経腸用液(レボドパ・カルビドパ水和物),ヴィアレブⓇ配合持続皮下注(ホスレボドパ・ホスカルビドパ水和物)や脳深部刺激療法が選択できる。
高齢に至り障害度が高くなったケースは,後期PD(late-stage Parkinson’s disease)と呼称されている。運動機能障害とともに,認知機能低下,幻覚・妄想,抑うつなどの非運動症状が問題となりやすい。そのような場合,以下を考慮する。
一手目 〈抑うつ・不安に対して〉イフェクサーⓇ37.5mg SRカプセル(ベンラファキシン塩酸塩)1回1~2錠1日1~2回,またはリフレックスⓇ15mg錠(ミルタザピン)1回1錠1日1回(就寝前)
一手目 〈認知機能低下に対して〉アリセプトⓇ3mg・5mg錠(ドネペジル塩酸塩)1回1錠1日1回(朝)
一手目 〈幻覚・妄想に対して〉セロクエルⓇ25mg錠(クエチアピンフマル酸塩)1回1~2錠1日1~3回
外出や他者との交流を積極的に勧める。多彩な非運動症状を念頭に置き,患者の愁訴の中に対処すべき症候がないかを常に注意する。指定難病の認定や身体障害者の申請など,必要に応じて公的支援が受けられるように配慮する。
いまだ根治的治療は存在しないが,脳内で不足するドパミンを補充することで長期にわたる安定した経過が期待できる。ドパミン補充は,錆びた自転車にさす油のようなものであり,補充だけではなく運動・リハビリテーションを継続することがとても重要である。症状の種類,進行の様子には個人差が大きい。治療を開始したら,服薬量や服薬時間をきちんと守ることが重要である。本人とともに家族が正しい知識をもって,長期にわたって疾患と付き合っていかなくてはならない。
【参考資料】
▶日本神経学会, 監:パーキンソン病診療ガイドライン2018. 医学書院, 2018.
▶武田 篤, 編著:パーキンソン病 実践診療マニュアル. 第2版. 中外医学社, 2018.
▶武田 篤, 他:実践! パーキンソン病治療薬をどう使いこなすか? 南江堂, 2018.
武田 篤(仙台西多賀病院院長)