心房細動(AF)例への経皮的左心耳閉鎖術(LAAC)は、抗凝固療法に対する非劣性がランダム化比較試験(RCT)で証明されている [PROTECT AF、PREVAIL] 。しかし対照群はいずれもワルファリン服用であり、症例数も多くない(707例と407例)。
そこでLAACとビタミンK拮抗経口抗凝固薬(VKA)、直接経口抗凝固薬(DOAC)を比較すべくネットワークメタ解析を実施したところ、有効性ではLAACとこれら抗凝固薬の間に差はないものの、周術期以降の出血はLAACで少ないことが明らかになった。ヒューマニタス・ガヴァッツェーニ病院(イタリア)のAngelo Oliva氏らが8月9日、Journal of the American Heart Association誌で報告した。
解析対象となったのはLAACとVKA、DOACを比較、あるいはVKAとDOACを比較したランダム化比較試験7報である(参加例:7万3199例)。VKAとDOACはAF例に用いた試験だけを採用した(LAAC vs. VKA:2RCT 、LAAC vs. DOAC:1RCT、VKA vs. DOAC:4RCT)。各試験の平均年齢は70~74.9歳、女性が29.6~39.7%を占めた。また23.1~44.8%が糖尿病を合併していた。
間接比較を可能にするネットワークメタ解析を実施し、「全脳卒中・全身性塞栓症」(1次評価項目)などのリスクをLAAC群、 VKA群、 DOAC群間で比較した。観察期間は22~48カ月である。
・1次評価項目
LAACと抗凝固薬の「全脳卒中・全身性塞栓症」リスクには有意差を認めなかった。LAAC群における対VKA群のオッズ比(OR)は0.92(95%信頼区間[CI]:0.62-1.50)、またLAAC群の対DOAC群ORは1.11 (95%CI:0.71-1.73)だった。一方、VKAとDOACの比較では、DOCA群で有意なリスク低下が観察された(OR:0.87、95%CI:0.77-0.98)。なおこれら「間接」比較と「直接」比較間に、有意な非一貫性 (inconsistency)は存在しなかった(=信頼性は高い)(P=0.866)。
・安全性
「大出血」リスクはLAAC、VKA、DOACの3群間で有意差を認めなかった。ただし「周術期出血」を除外すると、LAAC群における「出血」リスクは対VKA群ORで0.44(95%CI:0.28-0.69)、対DOAC群ORで0.55(95%CI:0.35-0.88)と両抗凝固薬群に比べて有意に低かった。この比較でも有意な非一貫性は認められなかった(P =0.827)。
DOACと比較したLAACの有用性を確認するにはさらに大規模RCTが必要だとOliva氏らは釘を刺していた。
本研究はCliniche Gavazzeni SpA社から資金提供を受けた。