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【識者の眼】「ネグレクトと感情調整の困難さの関係について」堀 有伸

No.5190 (2023年10月14日発行) P.59

堀 有伸 (ほりメンタルクリニック院長)

登録日: 2023-10-03

最終更新日: 2023-10-03

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誰でも、強烈な体験をして感情が強く揺さぶられる経験をすることがあります。そのようなときに私たちは、恐怖や怒り、悲しみなどの感情に圧倒されて飲み込まれないように、自分の気持ちをなだめる行動をとります。

その場を外して深呼吸をするかもしれませんし、安心できる人に連絡をして話を聞いてもらうかもしれません。このような方法で自分の感情を調整することに失敗し、言動のコントロールを失ってしまえば、面倒なことになる危険性があります。怒りを制御できないままに発言を行うことが、何らかのトラブルに発展してしまう可能性は低くはないでしょう。

このような感情調整が上手にできる人とできない人がいます。すぐに感情的になってしまう人は、様々な問題に巻き込まれやすくなります。他にも、自分の感情にまったく鈍感で、自分が傷ついて負担がかかっていることに気がつかないままに無理な頑張りを続け、気がついたら著しく健康状態が悪化していたという人もいます。

感情調整が上手な人というのは、小さいときから親のような養育者が、子供の感情の変化に敏感で、苦しい感情が高まらないように抱きしめたりあやしたりして、感情が高まりすぎないように適切に関わってくれた場合が多いのです。そういうふうに育った人は、自分はどのような感情が高まりやすいか、その感情はどのようにすると鎮められるのかを養育者から学び、やがて自分1人でもそれができるようになっていきます。

ネグレクトのような子どもにとっての虐待的な環境というのは、子どもの感情のあり方などにまったく価値が認められず、それが周囲の大人の関心を引くことがないまま、放置されるような状況と言えるでしょう。極端な場合に被虐待児は、自分が怒りや悲しみの情緒を感じていることを認識できないまま、強度の高まった感情に飲み込まれて訳もわからないまま行動してしまうということもありうるのです。

自分の感情に気づいて適切に名づけられること、それを無視するのではなく優先的に対応する価値があるものだと気づくこと、自分の感情を尊重することを周囲の他人に求めてもよいのだということを、精神療法の場面ではお伝えしていくことがあります。

堀 有伸(ほりメンタルクリニック院長)[激しい怒りや悲しみ][養育者による関わり]

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