株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【文献 pick up】ACE阻害薬服用中の日本人HFrEFをARNiに切り替えると?―PARALLEL-HF試験延長観察/Circ J誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-09-05

最終更新日: 2023-09-05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

欧米で実施されたランダム化比較試験(RCT"PARADIGM-HF"とは対照的に、日本人収縮力低下心不全(HFrEF)に対するアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNi)の有用性は、必ずしも明らかでない。ACE阻害薬と比較したRCT"PARALLEL-HF"では、有意ではないもののARNi群で心不全増悪リスクの上昇傾向を認めた(後述)。

ではこれらACE阻害薬服用例をARNiに切り替えると、HFにどのような影響が現れるのか。そのような観点からも興味深い観察研究が8月26日、Circulation Journal誌に掲載された。著者は筒井裕之氏(九州大学循環器内科)らである。

オリジナルのPARALLEL-HF試験は、ACE阻害薬/ARB服用中の、左室駆出率「<35%」でNT-proBNP上昇を認める症候性心不全225例を、ACE阻害薬群とARNi群にランダム化し33.9カ月間(中央値)観察した二重盲検試験である。

その結果、1次評価項目である「CV死亡・HF入院」リスクは両群間に有意差はなかったものの、ARNi群で高い傾向にあった(ハザード比[HR]1.0995%信頼区間[CI]0.65-1.82)。

今回の検討は上記の本試験終了後、ARNi服用の観察試験への参加に同意した150例中、観察期間中(平均1.6年間)に脱落しなかった124例である。

これら124例を対象に「ACE阻害薬→ARNi」変更群と「ARNi」継続群を比較した。

その結果、ACE阻害薬からARNiに変更しても、NYHA分類はほとんど変化しなかった。すなわち「ACE阻害薬→ARNi」変更群の90.9%NYHA分類は「不変」、6.1%が「改善」、3.0%が「増悪」だった。

一方、「ARNi」継続群におけるこれらの数字は順に、90.1%、4.2%5.6%である。

NT-proBNPは、ACE阻害薬からARNiに変更後2~4週間で有意に低下し、低下作用は12カ月後まで維持された。

 一方、ARNi継続群のNT-proBNP値は、4カ月後より上昇する傾向が見られた。

これらの結果より筒井氏らは「ARNi長期服用は日本人慢性心不全患者の治療において良好なリスク・ベネフィット・プロファイルを示した」と結論している。

本研究はNovartis Pharmaceuticals Corporationから資金提供を受け、実施された。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top