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【文献 pick up】性腺機能低下症男性に対するテストステロン補充の安全性は確認できたか?―大規模RCT“TRAVERSE”/NEJM誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-06-22

最終更新日: 2023-06-22

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テストステロン補充療法は性腺機能低下男性の健康関連QOL改善が報告される一方、血栓塞栓性イベントリスク上昇が懸念されてきた。それらイベントの著明上昇を報告したランダム化比較試験(RCT)大規模観察研究があるためである。

そこでテストステロン補充療法の安全性を確認すべく大規模RCTTRAVERSE”が実施され、その結果が6月16日、NEJM誌に掲載された。動脈血栓塞栓症の危険性は上げないようだが、不整脈や腎障害など新たな懸念材料も浮上した。

米国・クリーブランドクリニックのA. Michael Lincoff氏らによる報告を紹介する。

TRAVERSE試験の対象は、4580歳で心血管系(CV)疾患の既往あるいはリスク因子があり、かつ「テストステロン濃度<300ngdL」の症候性性腺機能低下症5246例である。全例、米国で登録された。

平均年齢は63.3歳、白人が80%を占めた。テストステロン濃度中央値は227ngdLである。

これら5246例を、1.62%テストステロン・ジェル(テストステロン濃度:350750ngdLに調整)群とプラセボ群にランダム化し、二重盲検下で平均33.1カ月観察した(治療期間平均値は21.8カ月)。

その結果、観察期間中、両群とも60%強が脱落したが、ITT解析の結果、1次評価項目である「CV死亡・心筋梗塞(MI)・脳卒中」発生率は、テストステロン補充群7.0%、プラセボ群7.3%で有意差はなかった。

またこの解析をもとに、テストステロン補充群の安全性はプラセボに対し非劣性とされた(P0.001)。

ただし「介入を要する非致死性不整脈」(5.2 vs. 3.3%)、「心房細動」(3.5 vs. 2.4%)、「急性腎障害 (injury)」(2.3 vs. 1.5%)はいずれもテストステロン補充群で有意に多発していた。Lincoff氏らはこれを「予想外」としている。

また検定は示されていないが、「肺塞栓症」もテストステロン補充群でより多く認められた(0.9 vs. 0.5%)。試験開始後6カ月間の収縮期血圧も、テストステロン補充群で1.8mmHgの有意高値だった。

CV系以外ではPSA値の上昇が、テストステロン補充群で有意に大きかった(0.20 vs. 0.08ngmL)。

これらがもたらす臨床的意義については、考察されていない。

本試験はAbbVieAcerus Pharmaceuticals、Endo PharmaceuticalsUpsher–Smith Laboratoriesの4社から資金提供を受け実施された。また試験手順書(プロトコール)作成にはスポンサーも関与した。

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