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【識者の眼】「駄洒落では済まない『健康食品で健康被害』」大野 智

No.5169 (2023年05月20日発行) P.66

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)

登録日: 2023-05-08

最終更新日: 2023-05-08

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花粉症への効果を謳った健康茶による健康被害が最近話題になった1)。医薬品成分のステロイド混入が原因として指摘されている。健康食品から医薬品が検出され、健康被害をきたすような事例は跡を絶たない。筆者が補完代替療法に関わりはじめた約20年前には、ダイエット効果を謳う健康食品で急性肝不全による死亡例が出たことは当時社会問題となった2)

今回、事業者の不誠実な対応以外にも、問題点が2つあると筆者は考える。

1つ目は、消費者の健康食品に関する過剰な期待である。特定保健用食品などランダム化比較試験で有効性が証明されている食品があることは事実だが、その効果は限定的である。解決策として、消費者のリテラシー向上、そのための教育の充実が消費者庁などから示されているが、手軽に健康問題を解決したいといった人間の欲望を消し去ることはなかなかできない。また、健康食品への期待の背景に医療不信があった場合、問題はさらに複雑になる。

2つ目は、安易に健康情報を流すメディアの姿勢である。今回の事例も、テレビ番組でタレントが絶賛しているのを観たことがきっかけとなり当該商品を購入している。またメディアだけでなく、著名人が個人の体験談としてSNSで商品を紹介し、それを観た人が購入するといった販売手法も一般化してきている。人の健康は、視聴率や広告費、フォロワー数や動画再生回数よりも重要であることを絶対に忘れないでほしい。

しかし、問題解決に向けた動きもある。今回の健康被害が発覚した経緯は、国民生活センターの「医師からの事故情報受付窓口」3)を介した報告であった。また日本医師会も「健康食品安全情報システム」4)を介して、患者からの相談や日常診療から知り得た健康食品による健康被害に関する情報を収集している。さらに、著名人等によるSNSを介した商品紹介も、ステルスマーケティングに対しては2023年10月1日より景品表示法による規制が強化される。健康食品の製造・販売・広告に関わる企業または個人は、安易な行動が規制強化につながり、結果的に自分の首を締めることになることを肝に銘じていただきたい。

【文献】

1)国民生活センター:花粉症への効果をほのめかした健康茶にステロイドが含有─飲用されている方は、医療機関にご相談を─.(2023年4月12日)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230412_1.html

2)厚生労働省:個人輸入した未承認医薬品等の服用後に発生した健康被害事例について.(2002年7月12日)
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/07/h0712-1.html

3)国民生活センター:医師からの事故情報受付窓口.
https://www.kokusen.go.jp/jiko_uketuke/index.html

4)日本医師会:「健康食品」・サプリメントについて.
https://www.med.or.jp/people/knkshoku/

大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法

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