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身体症状症[私の治療]

No.5154 (2023年02月04日発行) P.59

岡 文恵 (日本赤十字社医療センターメンタルヘルス科)

福田倫明 (日本赤十字社医療センターメンタルヘルス科部長)

登録日: 2023-02-01

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  • 以前は身体化障害,身体表現性障害と呼ばれていたが,現在は身体症状症(somatic symptom disorder)と呼ばれる。身体症状症では,痛み,嘔気,嚥下困難,呼吸困難感等の持続する多彩な身体症状を認め,思考や感情,行動が身体症状にとらわれているため,日常生活や社会生活に支障をきたし,また,それらの症状を説明できるような十分な医学的所見に乏しい。背景に心理社会的問題を持つことが多い。治療に満足せず,ドクターショッピングを繰り返したり,「症状があることで,自分は病人でいられ,周りの人が心配してくれる」という疾病利得が働いている場合がある。女性の有病率が高い。

    ▶診断のポイント

    「DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)-5」では,身体症状に伴う過度な思考,感情または行動に基づいて診断され,身体症状に対して医学的に説明できるかどうかは問わない。つまり,身体疾患があっても,その症状に「とらわれ」が生じていれば,身体症状症と診断される。うつ病,不安障害,アルコール依存症,薬物依存や人格障害を併存することがある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    身体症状症の患者は,様々な診療科,病院で検査や治療を行っても明らかな改善を得られず,精神科,心療内科に紹介されることが多い。そして,身体症状の原因が精神的な問題であるということに,納得していない場合がほとんどである。

    このような背景を十分に理解し,まずはこれまでの苦労をねぎらい,身体症状のつらさに共感する。次に,身体症状症では,身体的な原因と精神的な原因の境界を明確にするのは困難で,どちらも影響し合っていると考えられること,そして治療に際しては身体科と精神科が連携していくことを説明する。医師も症状緩和をめざし諦めずに一緒に考えていくことを伝えながら信頼関係を構築し,診療時間等の枠決めをして不要な救急受診をしないことや,むやみに他院を受診しないことを指導する。患者の話だけでなく,家族や周りの人からも情報を聴取し,生育歴や生活状況を把握することも重要である。

    治癒を期待せず,症状があっても日常生活や社会生活を送れることを目標とする。症状には波があり,よくなっても悪くなっても一定の態度で接し,諦めない,見放さない姿勢が治療者に求められる。

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