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【文献 pick up】がん合併AF例ではCHA2DS2-VASc低値でも動脈血栓塞栓症リスク上昇か―大規模コホート後方視的解析

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-01-26

最終更新日: 2023-01-26

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がん患者の心房細動(atrial fibrillationAF)発症リスクは高い。韓国における大規模調査では、対非がん患者のハザード比[HR]1.6395%信頼区間[CI]1.611.66)。特に食道癌(HR2.6995%CI2.452.95)、多発性骨髄腫(同:3.342.983.75)におけるリスク増が著明だった[Yun JP, et al. 2021。一方、がん合併AF例では非がんAF例に比べて大出血リスクの増加(HR1.2795%CI:1.261.28)も報告されている[Pastori D, et al. 2021。そのため抗凝固療法の適応を考えるには脳梗塞・塞栓症リスクの把握が重要となる。

そのような観点から興味深い報告が、JACC Cardio-Oncol誌ウェブサイトに117日付で掲載された。イスラエル住民コホートを用いた観察研究である。がんを合併する「CHA2DS2-VAScスコア≦2AF例の1年間動脈血栓塞栓症発生率は2.13%。がん非合併AFに比べ2.7倍のリスク増だった。Avi Leader氏(Rabinメディカルセンター、イスラエル)らの報告から紹介する。

解析対象となったのは、「CHA2DS2-VAScスコア≦2」のAF患者5644例である。「抗凝固薬服用例」や「がん診断歴」のある例は除外されている。

平均年齢は64歳、男性が74%を占めた。CHA2DS2-VAScスコアは「0」が11%、「1」は31%、「2」が58%だった。

その結果、動脈血栓塞栓症(atrial thromboembolism:ATE、脳梗塞、一過性脳虚血発作、全身性脳血栓塞栓症)発生率を比較すると、半年後はがん「合併」AF群で1.63%、「非合併」AF群は0.44%と「合併」群で有意に高く、1年後も2.13%と0.80%で同様だった(HR:2.7095%CI:1.654.41)。ただし3年後は、3.22 vs. 2.29%と「合併」群で高値傾向を示すも有意差とはならなかった(発生率はすべて「死亡」を競合リスクとして解析)。

そこで1年間のATE発生リスクを、CHA2DS2VAScスコア別に解析した。すると「男性:0、女性:1」ではがん「非合併」群に比べた「合併」群のHR3.0395%CI0.7512.09)と有意差を認めなかった一方、「男性:1、女性:2」では6.072.4515.01)の有意なリスク増加を認めた。

このような集団に対する抗凝固療法の是非は、前向き比較試験による検討が必要だとLeader氏らは記している。

本研究には開示すべき資金提供者はないとのことである。

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